筋トレはそれほど好きではないものの、運動自体は好きである僕です(笑)
「運動をする前にはストレッチをしましょう!!」
という話を聞いたことがあるかと思いますが、果たして、それには根拠があるのでしょうか?
言われてやってはいるものの、実際のところはどうなんでしょうかねぇ~~…。
今回は、そんなストレッチについてお話をしていきます。
特に、いままでは常識とされていたものを中心に取り上げていきます。
健康増進や趣味としてスポーツをしている皆さんのアップデートとなれば嬉しいですね(^-^)
≪Contents≫
従来の常識を改める
今までの常識では、以下の3つは常識とされていたかと思います。
- 運動前のストレッチはパフォーマンスが上がるため入念にした方が良い
- ストレッチをするのはケガの予防のため
- 運動後のストレッチは筋肉痛を和らげる効果がある
これらのことは100%真実ではなく、一部分が違っていたり、誤解されていたりしているところがあります。
そこで、僕らが常識だと思っていたことを改めるために、順番に説明をしていきます。
運動前のストレッチはパフォーマンスが上がるため入念にした方が良い
まずはじめに、冷えた筋肉を伸ばしてはいけません。
ミシガン大学で行われたラットの足の筋肉を使った実験で、軽くストレッチをしただけで筋繊維が損傷したことがわかっています。
また、ストレッチで一時的な後遺症(パワーやスピードの低下)が起こりうることが、数年の研究で明らかになっています。ストレッチをしてから、最大2時間の後遺症すなわちパフォーマンスの低下が持続することを明らかにした研究もいくつかあります。
『ジャーナル・オブ・ストレングス・アンド・コンディショニング・リサーチ』に掲載された、ミラノ大学で2010年に行われた調査を例に挙げていきます。
17人の被験者にそれぞれスクワットの姿勢から垂直飛びをさせました。
内容は、跳ぶ前に足のストレッチをした場合と、しなかった場合という2つの条件をつけています。
結果なのですが、ストレッチをしたときのほうが、「跳躍高」「ピーク時の筋出力」「最大速度(最大運動エネルギー)」のすべての数値が低かったのです。
これを証明する研究もありまして、マックマスター大学の研究結果で説明がつきます。
同大学の研究によると、ふくらはぎの筋肉を一定時間ストレッチした後では、以下のことがわかりました。
- 神経信号の送信に関係する力が弱まる
- その状態が15分続く
- さらに筋力自体が低下する
- もとに戻るのに最長1時間かかる
ですので、運動前にストレッチをすることが得策ではなく、トレーニング後やトレーニングをしない日に軽いストレッチをすると良いでしょう。
ちなみにですが、これらの研究は、皆さんが思い描いている『静的』ストレッチです。
だからといって、「パフォーマンスが低下するから」と、ストレッチをしなくてもよいというわけではないのです。
パフォーマンスを上げられる運動前のストレッチは、『動的』ストレッチです。
これは、使用する筋肉を可動域いっぱいに動かす必要があります。はじめは力を入れずにゆっくりと筋肉を動かし、徐々に勢いをつけていきます。
ワイオミング大学が行った2008年の研究で、以前行われていた米軍の研究(静的ウォーミングアップ後と動的ウォーミングアップ後での敏捷性とパワーに関する3つのテスト=往復持久走・メディシンボール投げ・五段跳び)がありまして、それと同じ方法で、大学のレスリング選手らを4週間観察しました。
この研究の結果では、動的ウォーミングアップをした選手は、
- 体力
- 持久力
- 敏捷性
- 無酸素性運動能力(幅跳びや腹筋運動など)
の測定値全体が向上したそうです。
ちなみに、静的ストレッチをした選手は、どの測定結果にも改善が見られませんでした。
ストレッチをするのはケガの予防のため
まずは、筋肉を損傷する原因について説明します。
筋肉を損傷するのは、身体を可動域内で動かしながら、大きな負荷をかけて筋肉を収縮させているときです。
誰しもが身体がこわばると筋肉を伸ばそうとします(つまり、ストレッチをします)。
一般的なのが「静的」ストレッチで、身体の部位をできるかぎり伸ばし、その姿勢を15~30秒ほど維持するというものです。これをすることにより、身体の可動域が広がり(柔軟性が高まる)、その状態を持続することは間違いありません。
ですが、バレリーナやアイスホッケーのゴールキーパー、テコンドーといった、柔軟性が求められる競技でしたらわかるのですが、可動域を超えて動かすようなことは基本的にありません。
マギル大学のスポーツドクター、イアン・シュリア氏は以下のことを主張しています。
ケガは、身体を可動域内で動かしている際に生じます。なぜ、可動域を広げることがケガの予防につながるのでしょうか?
この問題を解明するために、何百もの研究がおこなわれています。
疾病管理予防センターは、2004年に361の研究を検証し、「ストレッチがすべてのケガの軽減に関係するわけではない」という結論を導きました。さらに同センターは、「運動によるケガを防止するためにストレッチがおこなわれていますが、科学的な根拠はなく、直感やなんとなくそうしたほうがいいといった研究結果がもとになっている。」と述べています。
ちなみに、柔軟性を高める静的ストレッチの効果は、運動前より運動後のストレッチのほうが高いです。
なので、世間的に広がっている『静的』ストレッチは運動後やオフの日にすると良いでしょう。
運動後のストレッチは筋肉痛を和らげる効果がある
2009年の実験では、オーストラリア人のボード選手20人に激しい階段のぼりをさせました。
運動後、15分間の「静的」ストレッチをするグループと、何もしないグループに分け、1週間後に役割を入れ替えて実験しました。
実験の3日後に、2つのグループの筋力、筋肉痛、クレアチンキナーゼ(筋肉の損傷で上昇する酵素)の血中濃度を調べたところ、違いがまったく見られませんでした。
こうした研究には共通項が見られます。
コクラン共同計画(世界的に展開している、治療や予防に関する医療技術を評価するプロジェクト)が25の研究について2008年に発表した見解では、「ストレッチは運動後半日から3日後に起こる筋肉痛にほとんど効果がなく、あったとしてもごくわずかである」という結果がどの研究を見ても『見事に一致している』ことを示しています。
以上のことから、
- 運動前にパフォーマンスを上げるには「動的」ストレッチが有効である
- 運動前に静的ストレッチをしてもケガの予防にはならない
- 運動後に静的ストレッチをするのは柔軟性を高めるためであり、筋肉痛緩和ではない
ということが言えます。
各々のストレッチの特徴を理解して、上手く活用していくことが大切です。
ただなんとなくストレッチをするのではなく、トレーニングの一環としておこなう感覚が良いかと思います。
運動前の動的ストレッチはパフォーマンス向上の為のウォーミングアップで、運動後の静的ストレッチは柔軟性向上の為のトレーニングといった具合です。
ストレッチをすること自体は有効ですので、とりあえずではなく、しっかりと意味を理解して取り組みましょう☆
【参考文献】
[Acute effects of static stretching on squat jump performance at different knee starting angles.]
[Four-week dynamic stretching warm-up intervention elicits longer-term performance benefits.]
[The impact of stretching on sports injury risk: a systematic review of the literature.]
[Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise (Review)]