単純な肉体疲労なら、休めばなんとかなるものの、精神疲労は休んでもなかなか抜けないものです。
当然ですが、脳と筋は繋がっていまして、脳の疲労が筋に影響を及ぼして運動に支障をきたすことは十分にあります。「メンタルが病んじゃって、全然ヤル気が起きないよぉ…」という状態は、脳の疲労によって筋に情報伝達が上手くいかなくなります。
こうなってしまうと、本来の自分のパフォーマンスを発揮させるのは困難でしょう。
今回は『筋トレ前にメンタルを酷使すると成果が上がりにくい』ことについて解説していきます。
筋トレは、メンタルがスッキリしているときにしたいものですなぁ~~。。。
精神疲労による筋トレの成果について
2020年の論文で、この論文の主旨は「勉強や頭脳労働による精神疲労が筋トレのパフォーマンス低下につながるのでは?」というものです。
実験は筋トレが日課の男性9名(年齢は平均22.6歳)を対象にしたクロスオーバー試験でして、トレーニング歴は4年ほどの人のみを選抜しました。
具体的な実験デザインは以下のとおり。
- 最初の実験では、被験者全員のバックスクワットの1RMを調査する
- 2回目の実験では、被験者のうち半数に30分間のストループテスト(「青色」で書かれた「赤」が出てくるようなテスト)を指示して脳に負荷をかけ、1「自分の精神疲労はどれぐらいか?」を100点満点の尺度で評価してもらう。残り半数には30分のドキュメンタリー映像を見てもらう
- 15分後、1RMの70%のスクワットを3セット、回数は筋肉が限界になるまでおこなってもらう(セット間インターバルは3分)
- 3回目の実験では、2回目の実験で認知タスクをしなかった人にストループテストを指示し、あとは同じ要領で筋トレのパフォーマンスをチェックする
その結果なのですが、
- 精神疲労のない状態(100点満点の尺度で平均23.3ポイント低い状態)でスクワットをおこなった場合、精神疲労状態よりも15.8%ほどトレーニングのボリュームが多かった
- 精神疲労状態でスクワットをおこなうと、1セット目から3セット目までの回数が、精神疲労のない状態よりも激減した(13.2% vs -34.6%)
- 筋トレのモチベーションやジャンプ力については、精神疲労の有無に関わらず大きな差は見られなかった
頭が疲れていても動機づけ自体はなんとかなるものの、筋トレの回数に関してはそれなりに悪影響が出ているみたいですね。
僕の過去のブログでも書いたのですが、この実験でも似たような結果が出たようです。
とはいうものの、
- 2013年の実験では、精神疲労によるパフォーマンス低下が確認されなかった
- 2015年の実験でも、精神疲労状態に陥ってもパフォーマンスに影響がでなかった
両者とも下肢の持久力の調査ですが、特に問題がないという話もあります。
しかし、今回の実験は「トレーニングのボリュームの低下」が発覚したということなので、過去のデータと照らし合わせると、
- 精神疲労状態であっても、モチベーションやパフォーマンス自体には影響しない(重量自体は持ち上げられる)
- しかし、精神疲労状態ではトレーニングの回数に悪影響がでやすい(回数がこなせないので筋肉をつけにくい)
という感じです。
まあストロープテストって、一時期流行った脳トレの類いです。
なので、試験勉強や企画書の作成といった、現実にある精神疲労とは質が違う気がします。
とはいえ、過去の研究などを参考にすると、どんなことでも認知機能に負荷をかける作業を連続ですれば、脳は同じように疲れるようです。それを考慮すれば、日常生活でも筋トレの成果を下げてしまう可能性はそれなりにあるかと思いますね…。
なので、
- 筋トレは、勉強や仕事の前に済ませておこう!
- メンタルを酷使したら、筋トレを始める前に心を鎮めておこう!
てな感じでしょうか!
あとは時間に余裕があるなら、休みながらとにかくやり続けるのも良いかと思いますね☆
【参考文献】
[Mental Fatigue Reduces Training Volume in Resistance Exercise: A Cross-Over and Randomized Study]
[Prolonged mental exertion does not alter neuromuscular function of the knee extensors]
[Mental fatigue induced by prolonged self-regulation does not exacerbate central fatigue during subsequent whole-body endurance exercise]