筋肉を育むためにも、タンパク質の摂取は大切な作業です。
大まかな摂取量については、世間的な認知度が高く、
- 「1日につき、体重(kg) × 1.5~2.0g」のタンパク質を摂取していきましょう♪
というのが、もはや常識になっているかと思います。
2018年に出た、健康成人を対象にしたメタ分析では、1863 名の参加者を対象とした 49 件の研究データによって、「1.6 g/kg/日を超える量のタンパク質摂取は、筋トレによって誘発される FFM(総タンパク質摂取量と除脂肪量) の増加にさらに寄与することはない。」としています。僕の体重が70kgなので、一日につき112gのタンパク質を摂っていくのが最適解とされていました。食べ物から摂っていくのがベストですが、なかなか難しいので、プロテインを併用すると目標達成できますね。
こういった研究は日々続けられていて、今度は肝臓や腎臓を含めたタンパク質のベストな摂取量を調べてくれたものがございます。世間的には、「高タンパクは腎臓に悪い!」「高タンパクは肝機能に悪影響を与える!」という話がありますから、皆さんも気になるところでしょう(臓器を壊すつもりで摂取すれば、なんでも壊れると思いますけど…)。今回は、そういった観点でタンパク質の摂取量を見ていきたいと思っております。
肝臓や腎臓を含めたベストなタンパク質摂取量について
これは2023年に出た論文でして、この研究では、日常的に筋トレをしている男性48名(年齢:26±6歳、BMI:25.6±2.9kg.m -2)を集め、全体を4つのグループに分けて16週間の実験をおこなったそうです。
- 中タンパク質+複合トレーニンググループ:1日1.6g/kgのタンパク質を摂取し、筋トレと有酸素運動の両方をおこなう。
- 高タンパク質+複合トレーニンググループ:1日3.2g/kgのタンパク質を摂取し、筋トレと有酸素運動の両方をおこなう。
- 中タンパク質+筋トレグループ:1日1.6g/kgのタンパク質を摂取し、筋トレのみおこなう。
- 高タンパク質+筋トレグループ:1日3.2g/kgのタンパク質を摂取し、筋トレのみおこなう。
タンパク質の量を1日1.6g/kgと3.2g/kgのいずれかに設定し、そのうえで参加者全員の体型や腎臓、肝臓の変化をチェックしていったそうです。
結果ですが…、
- 体型については、どのグループも筋肉は同様に増加したものの、体脂肪率や内臓脂肪の量については、中タンパク質+複合トレーニンググループだけが減っていた。
- 運動のパフォーマンスについては、大胸筋、脚力、上半身のパワー、下半身のパワーが、すべてのグループで同様に向上していた。ただし、チェストプレスの持久力については、高タンパク質+筋トレグループのみ向上していた。また、レッグプレスの持久力は高タンパク質+複合トレーニンググループのみ向上していた。
- 体力(VO2max)については、複合トレーニングをおこなった2つのグループのみ改善がみられたものの、筋トレのみをおこなったグループには変化がみられなかった。
- 肝機能については、1日1.6g/kgのタンパク質を摂取した2つのグループは、GGT、AST、ALTといった数値には変化がみられなかった。
- 他方、1日3.2g/kgのタンパク質を摂取した2つのグループは、ともに肝機能の数値に変化があり、タンパク質の過剰摂取は肝臓に良くない可能性があるという結果だった。
- 腎機能については、1日1.6g/kgのタンパク質を摂取した2つのグループは、クレアチニンと尿素窒素のいずれにも有意な変化がみられなかった。
- 他方、1日3.2g/kgのタンパク質を摂取した2つのグループは、ともに腎機能の数値に変化があり、タンパク質の過剰摂取は肝臓に良くない可能性があるという結果だった。
以上のことから、「1日1.6g/kgのタンパク質なら肝臓や腎臓に悪影響を及ぼさないだろう」という結論ですね…。
その一方で、1日3.2g/kgのタンパク質摂取だと、もしかすると悪影響が出てくる可能性があります(体重70kgなら224g)。あくまで4ヶ月という短期間でのデータなので、長期間での影響は不明です。とはいっても、1日1.6g/kgを守っていれば大丈夫ですし、この量でも普通ならプロテインを併用しないと難しいので、身体を壊すつもりでないなら問題ないでしょう。
研究チームによると、
1日1.6g/kgもしくは3.2g/kgのタンパク質摂取は、筋力、筋肉量、パワー、身体のパフォーマンスの適応において、同等の恩恵を示す。下半身のピークパワーを除けば、1日1.6g/kgのタンパク質のみで、多くの人物はタンパク質摂取の恩恵を得られるだろう。
ただし、1日3.2g/kgのタンパク質摂取のデータを鑑みた場合、肝機能・腎機能のマーカーの上昇から、やはり1日1.6g/kgのほうが長期的には安全だと思われる。さらに、グループ間で比較すると、垂直跳びと懸垂は、1日1.6g/kgグループのほうが改善レベルが大きかった。
よって、健康ならば、1日1.6g/kgのタンパク質は安全だと結論づけられる。
当然ですが、すでに腎臓や肝臓になにか問題がある人は、医師との相談のうえでタンパク質の摂取量を決めてほしいです。
特に問題のない人であれば、筋トレをしていくうえでは、やはり1日1.6g/kgを目標にタンパク質を摂取していくといいでしょうね。おそらくは、今後も、この数値の目安は変わらないと思われますなぁ☆
【参考文献】
[A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults]
[Effects of 16 weeks of two different high-protein diets with either resistance or concurrent training on body composition, muscular strength and performance, and markers of liver and kidney function in resistance-trained males]