さすがに、生まれてきてから一度も嘘をついたことがないっていう人は、いないかと思います。
僕だって、真実ではないことを含めても、けっこうなほど嘘はついてきましたし、俗に言う“優しい嘘”は、かなりついています。なので、誰だって多少なりの嘘をついていますので、嘘に対してあれこれ言うことはできないことでしょう。とはいえ、世の中には「病的な嘘つき」が一定数存在しているのも、確かな事実です。どうして、病的と言われるまで、嘘をついてしまうのでしょうか!?
今回は、そんな嘘つきについてお話をしていきます♪
病的なまでに嘘をつく理由
これは、2020年に公開された研究でして、さまざまなメンタルヘルスフォーラム、ソーシャルメディア、大学から募集された623名を対象に調査がおこなわれたものです。年齢や性別、収入、学歴は統一されておらず、完全にランダムとなった対象者に以下のような質問をして全員の「嘘の頻度」と「自己認識」を測定していったそうです。
- 自身のことを「病的な嘘つき」と思うか?
- 他者から「病的な嘘つき」と言われたことがあるか?
- 日常的にどのくらい嘘をついているか?
結果ですが、自身を「病的な嘘つき」と認識しているグループは全体の13%で、彼らは1日に平均10回、嘘をついていたことがわかったそうです…。
今回得られたデータを分析していくと、病的な嘘つきにはいくつかの共通点があるそうで、それが以下のとおりとなっております。
- 嘘をつく理由がない:病的な嘘つきは、嘘をつく理由や目的がなく、「嘘をつきたいから嘘をつく」という現象が頻繁に確認された。特に、最初に何気なくついた嘘が、連鎖的に拡大していくことが多いとのこと。
- 思春期から始まる:多くの病的な嘘つきは、10代からこの傾向が始まったと報告している。これは、成長期における環境やストレスが影響している可能性があるとのこと。
- 嘘をついて安心感を得る:嘘をつくことで不安感が減少するそうで、アンケートでは「嘘をつくことで不安が減る」と、多くの人が回答している。これは、嘘をつくことが、自己防衛の1つとして機能していると思われる。
- 社会的な問題を抱えている:病的な嘘つきは、職場や人間関係、さらには法的な場面で社会的な問題を抱えていることが多い傾向にある。他者からの信用を失うだけではなく、自分自身も、その嘘に苦しむことがあるとのこと。
つまり、「病的な嘘つき」さんは、自分が嘘をつきたいから嘘をつき、安心したいから嘘をついているわけですね。
「病的な嘘つき」という概念は古くから存在し、1891年にドイツの精神科医アントン・デルブルック氏が「pseudologia phantastica : 幻想的虚言症」と呼ばれていたことから始まっております。
しかし、それ以降は研究の進捗があまりなく、この分野において、医学的に正式な診断基準として認められていませんでした。ですが、心理学が理論主導で経験的に裏付けられた診断へと向かう動きに伴い、今回紹介した研究では、病的な嘘が病理学の定義と一致し、精神疾患の診断対象として定義できるかどうかを経験的に検証しようとしております。
判断基準としましては、以下のようなもの。
- 持続的で広範囲な嘘をつく習慣がある
- 嘘によって社会的、職業的、または他の重要な機能において障害を引き起こす
- 自身や他者へのリスク(ex :自殺念慮を隠ぺいする嘘)を伴うことがある
もし、上記が正式なものとなれば、治療法の開発へと進めることができます。
現段階では、「病的な嘘つき」への明確な対策は不明。とはいえ、研究チームは、次のような方法が有効なのでは?…と推測されております。
- 認知行動療法(CBT):科学的に最も有効な心理療法で、嘘をつく動機や思考パターンを分析し、より適応的な行動に置き換える方法。自己制御を高める効果が期待されている。
- 薬物治療:嘘をつきたい衝動が抑えられない場合、特定の神経伝達物質を調整する薬が有効である可能性がある。
個人的に薬物療法で強制的に抑制するのは、いかがなものかと思っています(薬物による副作用が怖い…)。なので、「どうして嘘をついてしまうのだろう…?」「こういうとき、自分は嘘をついているな……。」と分析して、良い方向に持っていくのが最適かと思っていますね☆
【参考文献】
[Pathological Lying: Theoretical and Empirical Support for a Diagnostic Entity]