昔から「人間は自分と似た人を好きになる」とは言われているもので、友人やパートナーも然ることながら、いろいろなところで散見される心理現象です。
価値観が似ている、共通の趣味がある、といったものは、一気に親近感が湧いてしまいます。この心理現象については心理学における「類似性-魅力理論」と呼ばれる法則です。こういった心理現象があるので、交渉の場では、この法則を利用することがあります。
今回は、そんな「類似性-魅力理論」の法則が、驚くほどヤバいことをお伝えしていきます!
民族・宗教・政治間の類似性と魅力
これは、2024年に出たジョージタウン大学などのチームによる研究でして、この研究で面白いところは、主にグループ間(民族や宗教、政治的な立場など)の違いがある場合に、この法則がどれくらい現れるのかを見ています。
研究の構成としては、4つの実験で成り立っており、参加者の合計は2,664名となっております。それぞれの実験では、異なるグループ(民族や宗教、政治的な立場)間での「類似性の認識」と「親密になりたい気持ち」の関係性をチェックしております。
ビジネスをしている身としては、いわゆる“思想の強い話題”なところを見ているのが、興味をそそられますね(笑)
結果を見ていきますと…、
- 「相違点を祝う」 vs 「類似点を祝う」:参加者を「グループ間の違いを強調する条件」「共通点を強調する条件」「何も強調しない条件」の3つに分け、類似性と親密さの関係を調査した結果、どの条件でも類似性が親密さを予測できた。
- 民族間の類似性:アメリカ国内の黒人、ヒスパニック、白人の3グループを対象に、「価値観」や「文化」など7つの指標で相手グループとの類似性を評価した。その後、「友達になりたい」「隣人になりたい」といった親密さの度合いを測定したところ、類似グループに対しては、より親密になりたいという意欲が高まっていた。
- 宗教間の類似性:今度はバプティスト、カトリック、プロテスタントの3つのキリスト教宗派を対象に調査する。こちらでも、類似性を感じる宗派に対しては、他の宗派よりも親近感を持ちやすいという結果が確認された。
- 政治的立場間の類似性:リベラル派と保守派の参加者を対象に、相手陣営の価値観や目標の類似性を評価した。ここでも、類似性がある相手には、より親密さを感じるという一貫したパターンが確認された。
よって、個人だけでなくグループ間(個人的には、かなりのデリケートと思っている内容)でも、「自分と似た人に好意を持つ」現象が確認されたそうです。この結果をもとに、研究チームは
多様化社会において、共通点を見つけることは、グループ間の関係性を深める鍵となる。
兎にも角にも、まずは類似性を確認することで、不要な争いが止むのではないのだろうか?
とコメントしております。
当然ですが、今回のデータはアメリカ国内に限定されたものですので、他の文化圏でも同様の結果が得られるのかという限界があります。また、類似性が「好感・親近感」をもたらす一方で、「相違」による偏見や排斥のリスクも存在するので、そのあたりの注意が必要かと…。
とはいえ、「人間関係は、自分と似ていることが重要ポイントだ!」は人間の根本にある真理だと思います。
- 1 on 1の場面なら、「どんな共通点があるだろう?」という視点で会話をする
- グループの場面なら、「共通の課題意識・共通の目標」を明確にする
を意識すると良いのではないのでしょうか☆