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昔から言われていた「筋肉は、伸ばせば伸ばすほど増えていく!」は、本当なのか?

昔から「ストレッチによる筋肥大(Stretch-Mediated Hypertrophy)」という考え方がありまして、伸張による刺激で筋肥大を促進させるという方法です。今回は、そんな、昔から言われていた「筋肉は、伸ばせば伸ばすほど増えていく!」は、本当なのか?…について解説していきます。

どうぞ、よしなに♪

 

 

「ストレッチによる筋肥大(Stretch-Mediated Hypertrophy)」の詳細

 

この通説が始まったのが、動物を対象とした実験によって確認されたものからです。

たとえば、1973年の論文では、「鶏の翼に200gの重りを24時間取り付けて筋肉が伸びた状態を維持する」という実験があります。結果ですが、ストレッチされた鶏の翼の筋肉が最大で170%増加したというもので、これは大幅な上昇となりました。このような結果が現れた結果、これ以降に「筋肉はストレッチでも筋肥大が起こせるぞ!」と大騒ぎとなりました。

しかし、これは、あくまでも動物実験の段階です。こういった結果を、そのまま人間にも当てはめることができるのは不明だったのです。

 

動物実験と現実の人間のトレーニングには、次のような違いがあります。

 

  1. 動物モデルの特異性:そもそも鶏やラットなどの動物と人間の生理的な差が、結果の解釈を困難にする。
  2. 負荷が異常に高い:動物実験の場合、スパルタレベルで筋肉にかけさせる負荷が非常に大きいことが多く、これは通常の筋トレでは再現が困難である。
  3. 時間が異常に長い:実験では、筋肉が伸びた状態が数時間から24時間も維持されることがあり、上記と同様に、現実のトレーニングでは再現が困難である。

 

といった問題があり、まず「この概念は真実なのか?」から始まり、「真実だと仮定しても、これをどのようにトレーニングに取り入れればよいのか?」については、この段階では判断ができません。研究によって、ある程度の根拠が集まったものの、解釈の余地が大きいあまり、まだ「この概念は真実なのか?」という問題は解決に至っておりません。

 

 

 

実際のところ、人間に対して有効なのか?

 

では、実際に人間で「ストレッチによる筋肥大」が現れるのか?

参考になるのが、2021年に出たミナス・ジェライス連邦大学などの研究です。この実験では、45名のトレーニング未経験の女性(平均 ± SD: 年齢 = 22.7 ± 2.8 歳、体重 = 61.5 ± 9.0 kg、身長 = 1.61 ± 0.01 m、体脂肪率 = 25.9 ± 5.1%) が、コントロール群と4つのグループ(0°=膝伸展、)のいずれかに無作為に割り付けられ調査をおこなわれております。その結果ですが、膝を大きく曲げた状態(65〜100度の膝屈曲)で膝伸展運動をおこなったグループは、膝を浅く曲げた(30〜65度)で膝伸展運動をおこなったグループよりも大腿四頭筋が、およそ2倍の増加があったとのこと。

ですが、これには注意点がありまして、

 

  1. この実験で使われた伸張時間はわずか数分ぐらいだった。
  2. 筋肉の伸張も完全な伸展位ではなく、膝の最大屈曲角度(150度)より50度も足りていない。

 

というものがあり、この研究で確認された筋肥大効果は、「伸張による筋肥大」よりも、他の機序による可能性があると考察できるのです。というのも、筋肉を伸張させるトレーニングが筋肥大に有効な理由ですが、主に3つの仮説があります。

 

  1. 筋繊維の長さの変化:筋肉の伸張が大きいと、筋繊維の長さが増加する。これによって筋肉の伸縮効率が向上し、筋力やパフォーマンスにプラスの効果を与えると考えられる。ただし、この効果は筋肥大の初期段階、特にトレーニング初心者しか得られない可能性もあり、上級者には大きな効果がない主張する研究者もいる。
  2. 筋膜の張力変化:筋肉を包む筋膜が伸張されると、その張力が筋肉の成長因子を活性化させる可能性がある。この考え方が正しいのなら、筋肉を伸張させた状態でトレーニングをおこなうことで、筋膜を刺激して筋肥大を促進する可能性がある。
  3. 神経が適応しやすくなる:筋肉が伸張した状態で負荷をかけることで、神経系が効率的に筋繊維を動員するようになる。この適応は、筋肉の成長だけでなく、パフォーマンスの向上にも貢献する可能性がある。

 

これら3つの要素が合わさることによって、筋肉は伸ばせば伸ばすほど成長していくのです!

 

 

 

現実的に「ストレッチによる筋肥大」を有効活用するには

 

以上のことから、筋肉を伸張させたトレーニングは、個人的な感想として、パフォーマンス向上として十分に意味のある内容だと思っております。「ストレッチによる筋肥大」の妥当性は一旦置いておき、特にスポーツ等のトレーニングに取り入れるのが有効かと思います。

その際は、次の内容をガイドラインとして参考にすると良いでしょう。

 

  1.  基本動作を徹底する:ベンチプレスやデッドリフト、スクワットなどの多関節運動では、筋肉の最大可動域を意識する。たとえば、スクワットでは深くしゃがみ込み、大腿四頭筋とハムストリングをしっかり伸ばす。ベンチプレスでは、バーを胸にギリギリ触れるくらいまで下げて最大限のストレッチをかける。デッドリフトでは、ヒップヒンジ(股関節を軸に体を屈曲する動作)をしっかりすることで、ハムストリングと大臀筋のストレッチを最大化する、または、通常のデッドリフトよりもスタートポジションを低く設定することで、筋肉の伸張をさらに強調する(床にプレートを敷いて自分の立ち位置を高くするなど)。
  2. ストレッチの時間について:長時間の伸張は不要で、多くの研究では、1回のトレーニングセッションで、合計で3~5分間程度の刺激で効果が示されている。1セット中で約10~15秒間筋肉が伸張された状態にあると、筋肥大の効果が高まる可能性がある。
  3. 継続性を重要:筋肥大には時間を要するため、筋肉を伸張させるトレーニングも継続が重要ポイント。短期間の試行では効果がわかりにくいため、継続していくしかない。
  4. 上級者でも効果がある:トレーニング歴が長い人でも、筋肉を伸張させるトレーニングを取り入れることで、筋肉に新たな刺激を与えることができるため、停滞期を打破できる可能性がある。

 

いままでのの動物実験や人間のトレーニングデータをまとめていくと、とにかく筋肉を最大可動域でトレーニングすることで筋肉の成長が見込めます。実際のところ、僕自身、パフォーマンス重視で鍛錬を続けていまして、筋肉の動作を意識した方が実用性が高いことを実感していますのでオススメです☆

 

 

【参考文献】
[Hypertrophy and hyperplasia of adult chicken anterior latissimus dorsi muscles following stretch with and without denervation]
[Partial range of motion training elicits favorable improvements in muscular adaptations when carried out at long muscle lengths]

 

 

 

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