SNSなどによって、あらゆる情報が比較的簡単に入手できるようになった現代。
情報が津波のように押し寄せてきて、その処理に追われて時間が浪費してしまうことがあるでしょう。そんな昨今、心理学には「willful ignorance:故意の無知」という考え方が現れてきております。この意味ですが、言葉そのまま「敢えて情報を入れないで“知らない状態”にする」ということ。今回は、そんな故意の無知をすることが大切なのか?…について解説していきます。
情報過多な現代社会を、上手に生きていきましょう♪
≪Contents≫
故意の無知によるメリット
これは、2025年に出たコーネル大学などによるレビューでして、「意図的に情報を遮断することによって、ストレスの軽減や客観的な判断ができるようになる!」という結論を出しております。
冒頭にお話をした「故意の無知」ですが、たとえば、
- SNSで散見される、インフルエンサーなどによる「キラキラ投稿」を見ないようにする
- ネット検索で、多く出ている検査項目を深追いしない
- 自身がSNS等で発信した内容に寄せられた荒らしコメントを見ない
- 買い物などで、購入する選択肢を3つまでに限定する
etc.
肝心要なのは、単なる無関心や怠惰ではなく、“敢えて”自分の判断で情報を遮断するところにあります。
この「故意の無知」のメリットですが、以下のようなものがあります。
感情のバリア
たとえば、とある事件の情報を集める際、すべての噂や情報を追求していったら、知りたくなかった真相に辿りついてしまいます。そうなったらネガティブな感情に心が支配されてパフォーマンスの低下につながることがおおいにあります。しかし、敢えて情報を深追いしない選択肢をすることで、ネガティブな感情を自己防衛できます。
当然ですが、いわゆる「見て見ぬフリ」や「現実から目を背ける」などというような、知らないままにしておくのはよくありません。短期的な感情のダメージを回避する、心の準備をするために、あえて情報に耳をふさぐのはアリだと言えます。
判断の公平性の維持
いわゆる「認知バイアス」を回避するために、敢えて情報を制限するというものです。たとえば、就職面接で「学歴」や「年齢」といった情報を見ないで評価する場面が増えてきております。これは、意図して情報を制限し、バイアスを排除して本質に基づいた判断をするための方法と言えます。
情報過多によるストレス軽減
たとえば、ネットで買い物をする際、レビューを深追いしすぎでストレスや疲労が溜まり、決断できずに何も買えなくなるといったことが起きます。ここで、敢えて「故意の無知」をすることで、情報を限定して意思決定にともなう問題を回避できます。
故意の無知の実践方法
故意の無知の理論について、どれも説得力のある内容だと思っております。
「言うは易し」で、どうやって故意の無知を実践していくのかが気になるところです。実際のところ、簡単にいくものではないでしょうが、次のような要点から考えていくのが良いでしょう。
- 「必要な情報」のみを選定する:大切なポイントとしては、「その情報は現在の判断に必要なものなのか?」と「その情報は行動に直結するか?」の2つを意識することでしょう。この2つの意識があれば、必要のない情報を遮断することができます。
- 「情報過信」を見直す:「情報が多ければ多いほど正確な判断ができる!」という考え方は、正しい時もあれば間違っている時もあります。たとえば、何か買い物をする際は、「本当に必要な情報」を決めておくのが良いでしょう。その「本当に必要な情報」の選択は、「コレがほしい!」と直感的に心が動いたとき、一旦は保留にして、「欲しいと思った経緯」や「欲しいと思ったときの感情の動き」を分析するのが、より正確な判断ができます。
- 常に情報を断捨離する:メール通知の確認を1日2回の決まった時間帯にする、SNSの利用時間を1日10分に制限、ニュースアプリを一切見ない日を決める、情報の入手に関係する小さなルールを決めておく方法です。
こういったことを基本とするのがいいでしょう。
当然ですが、情報を避け続けて解決すべき問題から目を背けてしまう危険性があります。なので、自身の判断基準を設けて、
- いつまで遮断するのか?
- なぜ遮断するのか?
- どの範囲まで遮断するのか?
etc.
を明確にしておきましょう。
大事なのは、「必要な情報“だけ”集める」に終始すること。情報過多な現代において、認知の負荷を軽くするために、「この情報は、本当に必要なのか?」と自問自答して、知りたい理由を明確にし、情報の津波から自分を守っていくことが大切ですね☆
【参考文献】
[Self-blinding and the benefits of willful ignorance]