何年か前からブームとなっている「炭水化物制限・糖質制限ダイエット」ですが、結局のところ、本当に健康にとって良いものだろうか?
「糖質制限したら、ドンドン痩せていった!」という経験談が世間に溢れかえり、一大ブームとなった一方、「糖質制限は危険だ!」という声もあり、そのことでたびたび議論になっております(僕は炭水化物制限・糖質制限は否定している側です)。糖質は三大栄養素の1つで絶対不可欠のものなので、安易に制限はしてほしくないのは、僕個人的な意見ですが、メリット自体は存在しているのも確かな事実。今回は、そんな炭水化物制限・糖質制限の真実に切り込んで参ります。
炭水化物制限・糖質制限をしている方、検討している方は、どうぞ参考にしていってください!
炭水化物制限の効果の是非
参考にしているのは、2025年に出たメタ分析で、174件のランダム化比較試験から大規模なデータを評価し、現段階における炭水化物制限の結論を出してくれております。対象となったのは、計27ヶ国の人数述べ11,481名からデータをまとめてくれてますので、信ぴょう性については十分すぎるものとなっています。
効果についてまとめますと、以下のとおりとなったそうです。
■炭水化物制限によって改善したもの
- 中性脂肪(トリグリセリド):減少
- 血圧(収縮期・拡張期):低下
- 炎症マーカー(CRPやTNF-αなど):減少
- HDLコレステロール値:上昇
■炭水化物制限によって悪化したもの
- LDLコレステロール値:上昇
- 総コレステロール値:上昇
- 除脂肪量(筋肉量):減少
以上のとおり、炭水化物制限をすることで、心血管リスクが増加してしまう要素と減少してくれる要素が同時に現れるという、なんともいえない効果があったそうです。ことさらに取り上げるのなら、体重や体脂肪は落とせるものの、同時に筋肉も一緒に落ちてしまう点で、減量そのものが上手くいっても健康になれるかというと、正直ビミョウという感想です。
ただ、糖質制限ならどれも同じような結果になるということではなく、制限する炭水化物の量によって差が出てくるそうで、研究チームは炭水化物制限を3つのタイプに分類して解析していったとのこと。
以下が、3つのタイプとその効果の差です。
- ケトジェニック:炭水化物を摂取エネルギーの10%以下(1日20〜50g)にした場合、体重減少は最大になるものの、LDLコレステロール値と総コレステロール値の増加も大きい。
- ローカーボ:炭水化物を摂取エネルギーの10〜26%にした場合は、体重減少は3タイプの中でも中庸で、血圧や脂質改善も確認される。
- ミドルカーボ:炭水化物を摂取エネルギーの26〜45%にした場合は、体重減少は3タイプの中でも最小なものの、筋肉量の減少が少なく、心血管リスクの改善とバランスが取れている。
ということで、兎にも角にも体重を落とすことを目標にするのなら、徹底的に炭水化物を制限することです。
しかし、僕個人としては健康被害を最小限にしてほしいので、それを鑑みるのなら、炭水化物を摂取エネルギーの30%前後に留めておくのが無難でしょう。極端であるほど体重減少“だけ”を考えるなら良いのでしょうが、その選択肢をとった場合、健康被害も同時に高くなってしまうので注意が必要です。そして、どのタイプにも言えますが、筋肉量の減少を抑えるためにも、タンパク質の摂取量はいつもよりも多くしておいた方が良さそうです(体重 1 kgにつき 1.6 ~ 2.2 g)
ちなみに、今回の分析で炭水化物制限の効果が現れやすい人がわかったそうで、
- 女性
- 肥満
- 2型糖尿病患者
については、血圧や炎症マーカーの改善が大きかったとのこと。反対に、健康上特に問題がなくBMIも正常ならば、こと健康においてはあまり大きなメリットは確認されなかったようです。つまり、現代医学の視点で元気な人が、無理をしてまで炭水化物制限をしても得られるものがなく、LDLコレステロールが増えたり筋肉が減ったりするだけということになります。
信ぴょう性が極めて高い今回のメタ分析にも注意点がありまして、それは、「炭水化物の質(食物繊維込みと精製糖質のみの比較)」の分析をおこなっていないということ。
炭水化物は「糖質 + 食物繊維」なので、たとえば同じ 200 gの炭水化物でも、「全粒粉のパンと野菜の組み合わせ」なのか「白パンまたは砂糖」のカットなのかで健康効果が違うのは、素人でも思ってしまうでしょう。食物繊維の摂取量が多いほど心血管リスクは下がることがわかっておりますので、それを踏まえると、糖質制限を考えるときは量より質を優先するのがベターでしょう。
やるのなら、明確な目的を持って取り組んでほしいです☆