僕は、割とネガティブなことを引きずり続ける人間で、そのことを思い出してモヤモヤしてしまうことがあります。
ネガティブな感情を引きずってしまうと、なかなか適切な判断ができなくなることは、皆さんもなんとなくわかるかと思います。そんな折、「メンタルが病んでると、どうして適切な判断ができなくなるのか?」ということをしっかりと研究してくれた方々がいらっしゃるので、今回はそれをご紹介していきます。
人間が感情的な揺さぶりがかかったとき、どのような判断力の変化がみられるのか、知りたいものです♪
ネガティブな感情による判断力の欠如
これは2024年に出たライデン大学の研究チームによるもので、研究チームは、心理学で提唱されている「ブロードン&ビルド理論」をピックアップしております。この理論について簡単に説明しますと、
- ポジティブな感情は視野を広くさせ、創造性や柔軟性が向上する
- ネガティブな感情は視野が狭くさせ、注意力が向上する
といったもので、感情の状態によって、能力に変化が起きるといったものです。
この理論に付いて更に研究チームが焦点を当てたのは、「この理論が現実で、どのように再現されるのか?」という点です。そもそも論ですが、日常生活において、感情が完璧にネガティブかポジティブに二極化することが頻繁にはありません。なので、この理論を現実にどう落とし込むのかがポイントなのです。
せっかく提唱したのだから、有効活用したいものです。
実験内容ですが、研究チームが用いたのが“ナボン課題”という心理実験です。
この実験は、「被験者に、小さなアルファベットで構成された大きなアルファベットを見せ、どのような反応を示すかをチェックする」というもの。例えば、小さな「O」で出来た大きな「Q」を被験者に見せて、注視するところが「全体」なのか「細部」なのかをチェックしていったそうです。これを「ブロードン&ビルド理論」で考えると、ネガティブな状態なら「小さいO」に注目しますし、ポジティブな状態なら「大きいQ」に注目すると推察したわけです。実験では、被験者に自分の過去のポジティブな出来事もしくはネガティブな出来事を思い出してもらい、そのうえでナボン課題に回答してもらったという流れです。
結果ですが、まずブロードン&ビルド理論のとおり、ポジティブな状態では視野が広がり、ネガティブな状態では視野が狭まるという傾向は部分的には確認されたそうです。その中でも特に注目すべき点は、「感情的な刺激は、視野が狭くなるだけでなく、認知資源を封じてしまう傾向がある」というものです。つまり、ネガティブな感情が高まると、その感情が脳のリソースを独占してしまい、次のタスクのパフォーマンスが低下してしまうということです。
「イライラして、資料作成ができなくなる」や「落ち込み過ぎて、何度も同じ文章を繰り返して読んでしまう」という現象は、こういったことが原因で起きてしまうというわけです。
そこで、この「認知資源の封殺」を防ぐには、どうすれば良いのか?
まず、今回の研究で得られた知見では、「感情の処理をせず、強引に思考する」という方法は、あまり現実的ではないとのこと。とにもかくにも、まず感情の状態をキチンと認識して、しっかりと処理することが、結果的に思考のパフォーマンスが向上するそうです。
プロセスとしては、
- ネガティブな状態であることを認識する
- 現在、自分はまともな思考ができる状態ではないことを理解する
- 無理にタスクに取り組もうとせず、まずは自分の感情と真摯に向き合う
といった手順を踏んだ方が良いでしょう。
ネガティブな感情は、思いのほか、脳のリソースを浸食してしまいます。なので、上記のような手段で回復させないと、なかなか適切な判断ができなくなります。肝心の感情との向き合い方なのですが、たとえば「日記をつけて、感情を言語化する」や「瞑想」といった方法があります。あとは、「今のこの自分の感情は怒りなのか、それとも緊張なのか?」と抱いている感情を明確化するといった手段も良いでしょう。
自分の感情と素直に向き合うと、意外と心が落ち着くものです☆
【参考文献】
[Not feeling it: lack of robust emotion effects on breadth of attention]