皆さんは、「エネルギー流束」という言葉をご存知でしょうか?
簡単に説明しますと、
- 低エネルギー流束:あまり食事を摂らず、あまり動かない(安静時代謝 × 1.3のカロリーを摂取し、摂取カロリーに合わせて活動量は減らす。平均値2,449±406kcal)
- 高エネルギー流束:たくさん食事を摂り、たくさん動く(安静時代謝 × 1.7のカロリーを摂取し、摂取カロリーに合わせて活動量を増やす。平均値3,191±587kcal)
というものです。
昔からこの研究がされていて、基本的に、高エネルギー流束の方が健康に良いとされています。たとえば、2003年の研究では、高齢者10名を対象にした実験で、高エネルギー流束になるほどエネルギーの代謝効率が改善し続けたというデータが得られています。この研究チーム曰く、「運動による高エネルギー流束の生活は、加齢によって伴われる体脂肪の増加を抑止する働きがあるかもしれない」とのこと。
最近の日本の研究でも、それを証明するようなデータが得られたようなので、今回は、それについて解説していきます♪
高エネルギー流束による死亡リスクの低下
これは2023年に出た早稲田大学などによる研究で、日本人のエネルギー流束について調査してくれたものとなっております。この研究は、日本に住む65歳以上の男女4,159名を対象に、参加者全員の歩数と食事量をチェックし、それぞれが死亡リスクにどんな影響を与えるかを分析したものです。
詳細ですが、
- 加速度計を使用し、参加者全員の1日当たりの歩数を測定。
- 食物摂取頻度調査法(FFQ)を使って参加者の食事内容を調査する。ただし、カロリー摂取量が実際よりも少なめに出る傾向にあるなので、二重標識水法によるエネルギー消費量のデータを基に補正する。
- 参加者を中央値で3.38年間追跡し、その期間中に亡くなった人たちを記録し、上記のデータと照合していく。
ということで、参加者の普段の運動量と食事量を調べて、その死亡リスクを照らし合わせていったというわけです。
結果なのですが…、
- カロリー摂取量が多く、歩数も多い人たち(男性2,400kcal/日以上、女性1,900kcal/日以上で、さらに1日5,000歩以上を歩いている人)は、最も死亡リスクが低かった。
- 歩数が1日4,000歩未満の高齢者は、歩数を増やすことでカロリーの摂取量が増加したため、運動量を増やして食事量を多くすることで、死亡リスクの低下があるのかもしれない。ただし、歩数とカロリー摂取量の相互作用効果は確認できなかった。
- 高齢者の死亡リスクが最も低くなる最適なカロリー摂取量は、1日の歩数が100歩増えるごとに35~42kcalの増量が望ましいと思われる。
- 1日6,000歩の高齢者の場合、最適なエネルギー摂取量は1日2,100~2,520kcalになる。
ということで、この研究でも、たくさん食べてたくさん動いた方が健康に良い!…という結果となりました。
注意点としては、65歳以上を対象にしたデータであるため、成人以下の若者でも同様なのかは不明です。とはいえ、一般的な、特に病気を抱えている人でないなら、基本的に高エネルギー流束が良いとは思っております。また、この研究で定義している「身体活動」とは、スポーツや運動といった類いのものではありません。ガーデニングやペットの散歩など、身体を動かす趣味や日常生活も範疇なので、それらを加味すれば自然とエネルギー流束が高くなります。
よく食べよく動くは、基本にして頂点なんだよなぁ~~…☆
【参考文献】
[High energy flux mediates the tonically augmented beta-adrenergic support of resting metabolic rate in habitually exercising older adults]
[Association between doubly labelled water-calibrated energy intake and objectively measured physical activity with mortality risk in older adults(Published in International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, December 2023)]