メニュー 閉じる

【肥満の記憶】ダイエット後にリバウンドをしてしまう理由

ダイエット後、人によっては、リバウンドを経験したことがあるでしょう。
実は僕も、リバウンドではないのだけど、油断すると脂肪が付いてしまうんですよね。太っていた時期がありまして、脂肪を大きく落とした後、身体を動かさない期間が長かったら、ポッチャリとしてしまいます…。

元通りになってしまうならまだしも、ダイエット前よりも太ってしまうこともありますから、リバウンドは侮ってはいけません。この問題について、「意志が弱いからだ!!」などと精神論で片付けようとする人が一定数います。しかし、最近では「人体は、肥満の記憶によって肥満が再発される」という考察が出てきており、リバウンドは、単なる怠慢などの類いではない様子です。

今回は、ダイエット後のリバウンドについて解説していきます。

 

 

肥満のエピジェネティック記憶

 

これは2024年に出たチューリッヒ工科大学などによる実験でして、研究チームは肥満を経験した人間とマウスの脂肪組織を解析していきました。

人間に対しては、肥満を抱えて生活をしている人(糖尿病ではない)と、健康的な体重の人の脂肪組織を比較し、遺伝子の変化を評価していきます。マウスに対しては、肥満からの減量とリバウンドを再現し、後天的な遺伝子の変化を評価していきます。その後、人間とマウスのデータを統合、「肥満の記憶」がリバウンドに与える影響を調査していくという内容です。

分子レベルから個体レベルまでチェックし、個々の細胞が代謝記憶を保持しているかどうか、またそれが他のメカニズムによって付与されるかどうかを突き詰めていったそうですね!

 

今回の、この分析によってわかったことが、以下のものとなったそうです。

 

  • 一度肥満を経験すると、遺伝子発現の変化が持続する:肥満になった時には特定の遺伝子グループが活性化するものの、体重減少後でも、その変化は完全には元に戻らず、脂肪細胞の代謝能力を低下させ続ける
  • 一度肥満を経験すると、エピジェネティックな変化が持続する:DNAそのものではなく、遺伝子のオン・オフを制御する「エピジェネティクス」と呼ばれる仕組みが肥満時に変化し、その変化が体重減少後も細胞に残存し続ける。
  • 上記の変化の結果、リバウンドが促進される:この「肥満の記憶」を持つ脂肪細胞は、新たに高カロリー食を再開すると、通常よりも早く脂肪を溜めようとするようになり、リバウンドを促進させる傾向がある。

 

簡潔にまとめると、一度でも肥満になると、遺伝子レベルでリバウンドしやすい体質になってしまうという結論です。

特筆すべきは、これらの変化が一時的なものではなく、長期間にわたって細胞に“記憶”として残存するところです。肥満を経験した脂肪細胞には「肥満の記憶」が残ってしまい、体重が減った後でも、その影響が続くことが示されました。この記憶が、リバウンドを引き起こすトリガーになる可能性があるわけです。

 

 

 

肥満の記憶が誕生する機序

 

人体が肥満を記憶するメカニズムには、“エピジェネティクス”というものメカニズムが関わっております。

エピジェネティクスとは「後天的に獲得した、遺伝的要素」という意味がありまして、DNAそのものが変化するわけではなく、DNAに化学的な「印」を付けることで遺伝子の働きを制御する仕組みです。肥満を経験すると、脂肪細胞のエピジェネティクスに、以下のような変化が現れます。

 

  • 代謝に関わる遺伝子の抑制:脂肪細胞のエネルギー代謝や、脂肪燃焼を補助する遺伝子が作動しにくくなる。これにより、エネルギー消費が低下し、脂肪が蓄積しやすくなる。
  • 炎症に関わる遺伝子の活性化:炎症を引き起こす遺伝子が活性化し、脂肪細胞に慢性的なダメージを与える。この炎症状態が、脂肪細胞の健康を害するだけではなく、全身の代謝機能にも悪影響を与える。
  • リバウンドの準備状態を作る:肥満時のエピジェネティックな変化は、体重減少後も脂肪細胞に残り続け、次に高脂肪食を摂取した際に、通常よりも早く脂肪を蓄積する状態を作り出す。この一連のメカニズムの結果、ダイエット前よりも体重が増加する「ヨーヨー効果」を引き起こしてしまう。

 

これらのメカニズムが起き、「肥満の記憶」が脂肪細胞に刻み込まれたせいで、

 

  1. 肥満時に脂肪細胞がダメージを受ける
  2. 体重が減った後も、カロリーがうまく消費できなくなる
  3. 慢性的な炎症状態が続き、健康被害を受ける

 

で、最終的にダイエット後に高脂肪食を摂ると、いつもよりも速いスピードで太ってしまうのです…。

 

 

 

 

なるほど、リバウンドが起きる仕組みはわかった…。では、それを防ぐには、どうすればいいんだよ!?」…っていう話ですよね?

上記のメカニズムがある以上、リバウンドを避けるのは一筋縄ではいきません。メカニズムを見るに、リバウンド対策になるのは、次の3つに取り組むのがよろしいのではないかと思っております。

 

  1. 運動を取り入れる:運動には抗炎症作用がありますし、ダイエットによる筋肉の低下を防ぐという点でも、運動はおこなっていった方がよいでしょう。なんなら、「カロリー制限 + 運動」の方が炎症対策には効果的であるというデータも存在しています。
  2. 急激な体重低下をしない僕の過去のブログでも書きましたが、急激な体重減少は、ほとんどの人がリバウンドし、太りやすくなり、食欲が止まらまくなります。「この悪影響は6年経っても治らない!」と言われており、今回の本題と合わせると、急激な体重低下は肥満の記憶を助長させると思われます。
  3. メンタルケアを心がける:リバウンドにはストレスなどの感情的な要因がありますので、マインドフルネス認知行動療法で対応していきましょう。

 

その他、「加工肉を食べるとAGEsが活性化してリバウンドしやすい!」や「外食が多く、魚の消費量が少ない人はリバウンドしやすい!!」なんてデータもありますので、そのあたりに気を付けるとよろしいかと思います。何事にも言えるつまらない結論なのですが、「極めて健康的な生活を送りましょう♪」っていうところなんですよね☆

 

 

【参考文献】
[Adipose tissue retains an epigenetic memory of obesity after weight loss]

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です