うつ病といえば、セロトニン不足や日光浴不足、ドーパミンのアンバランスが原因だとされております。
言わば、「脳内物質の問題」がうつ病の原因であるというのが通説ですが、近年では、「うつ病の原因って、○○なのでは!?」が有力視されてきております。うつ病ってメンタル系の悩みの代表格みたいなもので、てっきり脳に原因があるのではないかと想像してしまうのですが、実のところ、そうとも言い切れない様子…。
今回は、そんなうつ病の新俗説について解説して参ります!
炎症による精神疾患リスク
基本的に炎症は、身体やストレスや感染、外傷等に対して反応する機能で、皆さんもご存知でしょう。
身体を守る重大な機構ですが、慢性化すると、心臓病や自己免疫疾患など、様々な病気のリスクを高めてしまいます。そして、近年のデータでは、この慢性炎症は脳にまで影響が出ることがわかりまして、脳神経に炎症が起こった結果として、うつ病などの精神疾患につながるという説が増えてきておりまう。
最近だと、2024年に出たメタ分析では、スウェーデンのアポリポタンパク質死亡リスク(AMORIS)コホートから585,279名のデータを評価し、イギリスバイオバンクの485,620名のデータで検証した結果、CRPなどといった血中の炎症マーカーが高い人ほど、精神疾患のリスクが上昇していたと結論を出しております。すなわち、脳内の神経伝達物質のアンバランスよりもまず、身体の炎症が精神疾患の原因となっている可能性があるということ。
身体と精神が表裏一体となっているといっても良いでしょうね!
次に、「炎症を抑えると、自然とうつ病が改善されるのか?」について解説していきます。
2022年に出た、31件のRCT(ランダム化比較試験)を分析した系統的レビューが参考になりますので、ご紹介していきます。このレビューでは加齢により慢性炎症が進みやすい高齢者(65歳以上で平均年齢は83.6 ± 11.1歳、男女比は男性46.5%、サンプル数は12,192名)が対象になっており、結果をお伝えしますと、
- オメガ3脂肪酸やハーブ療法といった食餌療法による抗炎症的介入は、プラシーボよりも有意にうつ症状を改善した
- 抗炎症的介入グループの改善レベルは、一般的な抗うつ薬を使用したグループと同等だった
という感じで、食餌療法は、いろいろと副作用が気になる薬物療法と同レベルの効果があるのが嬉しいところ。
抗炎症効果のある食事を摂ることで、抗うつ剤と同じくらいの効果があるのなら、お財布に優しく副作用の心配がないのなら最高です☆
【参考文献】
[Inflammatory Biomarkers and Risk of Psychiatric Disorders]
[Anti-Inflammatory Dietary Diversity and Depressive Symptoms among Older Adults: A Nationwide Cross-Sectional Analysis]