「感謝の気持ちを伝えると、人生が豊かになるよ♪」というのは、心理学的にも哲学的にも素晴らしいことです。
実際に、感謝の気持ちが強い人ほど気持ちが穏やかなのは確かなことで、なんとなくでも、感謝の気持ちが強い人と付き合っていきたいでしょう。ですが、「感謝の気持ちを伝えたら、むしろネットいじめが増えた子供たちが一定数いる!」という、なんとも信じがたいデータがありますので、今回はそれをお伝えします。汚い言葉ですが、いわば“つけ上がる”ということが、ネット上では起きてしまっているようです。
感謝の気持ちを持ち続けながらも、そういった現象が見られたことについて解説していきます!
感謝の気持ちとネットいじめの関係性
これは2025年に出た、ポーランドの中学生548名の生徒たちを対象におこなわれた調査です。うち149名に対して「1週間の感謝介入プログラム」を実施したそうで、そのプログラムの内容が以下のとおりとなっております。
- 感謝についての動画を視聴し、クラスでディスカッションする
- 「その日に起きた良かったことを3つ書く」という感謝のジャーナルを作成する
- 生徒全員で作る「クラス感謝ノート」を作成する
- 週末には“個人的な感謝のチャレンジ”も実施してもらう
その上で、「サイバーアグレッション(ネット攻撃)」に変化が現れるかを分析していったそうです。
たとえば、SNS上での誹謗中傷、メッセージでの嫌がらせ、グループからの排除などといった、オンラインでの攻撃行動に差が出来てきたかを評価していったそうです。
結果なのですが、
- 基本的に、エクササイズのあと、ネット攻撃は全体的に減少した。
- しかし、一部の男子生徒や“そこそこ感謝できる子ども”は、むしろ攻撃性が増加した。
まず結論として、全体的にネット攻撃行動は減り、特に「気に入らない相手に仕返ししよう!」といった動機による攻撃が減ったとのこと。これは、「感謝を通してネガティブな感情を対処できるようになった」のが理由だと考察されております。
ところが、一部の男子生徒には逆効果となり、そのなかでも「ネガティブな感情が爆発したことによる攻撃」と「他者を蔑む攻撃(いわゆる“ウケ狙い”や“イジる”ことで笑いをとろうとするような行為」という2つの行動は増加する傾向があったんだそうな。このような現象が起きている原因としては、「性差によるもの」として推測しています。
とはいっても、こういった性差が現れた明確な原因は不明。現段階で言えることとなると…、
- 女子は「関係性」や「共感性」を重視する傾向があるため、感謝の気持ちを伝える行動が社会とのつながりを強化させる可能性がある。
- 男子は「自立性」や「上下関係」を重視する傾向にあるため、感謝の気持ちを伝える行動が上下関係を強化させる(この場合、感謝の気持ちを伝えた側が格下になる)可能性がある。
女子は感謝の気持ちを素直に受け取るものの、男子は「感謝すること = 負けを認める」みたいな考え方になるかもしれない、変な思考があるようですね…。
とは言っても、基本的に感謝の気持ちを伝えることは大切なことだし、メンタルにとって健康的な行動です。今回の研究を参考にするなら、感謝の気持ちを「誰に」「どのような形で」伝えるかによって効果が大きく異なることに注意した方が良いという感じです。
人によっては、それが攻撃のきっかけとなる可能性があるので、覚えておいて損はないでしょうな☆
【参考文献】
[Gratitude interventions reduce cyber-aggression in adolescents: gender and disposition effects]