人間、生きていれば嫌なことの思い出はできてしまうもの…。
僕も、そんな嫌な思い出の1つや2つは存在します。
そんな嫌な思い出は、自身の人間としての深みを持たせてくれますし、決して無駄にはならないものだと思います。そんな苦しい経験は、むしろ僕らの人間としての魅力を引き出してくれます。
今回ご紹介するのは、嫌な思い出、いわゆる『トラウマ』が僕らの“力”となるという話です。
どのような形で僕らに力として与えてくれるのか、今回の記事を通して知っていただけると幸いです。
僕らのトラウマが、これをきっかけに躍進するかもしれません!
≪Contents≫
トラウマは創造性や可能性を生み出す
今回ご紹介するのは、2013年に行われた研究です。
1994年のルワンダ虐殺という凄惨な事件を生き延びた男女100名を対象に、その凄惨な事件の後、どう変わったのかということを調べたものです。
虐殺という、一般的な人たちが抱えるトラウマよりも大きな苦痛を乗り越えた人たちが、どのように立ち直っていったのかという研究ですので、多くの人たちの参考になる内容です。
この研究では、61%の人は当時からほとんど変化がありませんでしたが、39%の人たちは事件のあと、
- 新しいアイデアが思いつきやすくなった
- 新しい人生の可能性に目を向けることができるようになった
と言っていたそうです。
この39%が多いか少ないかは各々の感覚によりますが、虐殺という凄まじいトラウマを受けても、39%の人々がその経験を活かしているという事実があるのです。実際に作曲やダンスといった芸術や、起業といった新しいことへ挑戦する人が多くいました。
それだけ嫌な思い出は、想像性の向上や新しいことへの可能性に目を向け、力に変えることができるのです。
苦しい経験を積むほど想像性が上がる
別の研究で、災害や事故や病気などに遭遇した373人の40歳前後の男女を対象に行った実験があります。
虐待やいじめといったことを含め、苦しい経験をした回数が多ければ多いほど、創造性が上がっていくことを実感している人が多いということが分かっています。
悲しい過去や差別といった経験がある人たちが芸術家として成功するといった話を聞くかと思いますが、こういった実験で、実際に想像性が上がっていることを実感できます。
そのほか、
- 対人関係において、新しい可能性や精神的なタフネスがある
- 人間としての深みが増す
- 人生に対するありがたみを感じ、幸福度が増す
といったことも起きます。
この創造性が上がる理由としては、苦しい体験のストレスから逃れようとして人間は創造的な活動に向きやすくなるということです。
たとえば、自分の苦しい経験を絵として書きおこすことによって、ストレスから逃れようとすることがあります。これは筆記開示に似た行動で、自分が感じているストレスや悩みなどを紙に書きおこし、言語化していくほどストレスが減っていくという研究があります。
このことが、芸術への開花につながるのかもしれません。
トラウマを治療していきたい場合
苦しい経験やトラウマが、僕らの力となって後押しをくれます。
だとしても、どうしてもそれが心に染みついて離れないことがあります。
少し勇気が必要ですが、2018年の最近のデータで「恐怖心を乗り越える方法」というのがわかりましたので、それをご紹介します。
これはコロラド大学の実験で、68人の健康な男女が対象としたものです。
まずは全員に、以下の方法で”恐怖心”を植えつけました。
- ガラスを引っかく不快音を聴かせる
- 不快音と一緒に強い電気ショックをあたえる
この方法をくり返しおこない、頭のなかで「不快音」と「電気ショック」が結びつけさせます。
そうすることで、ガラスを引っかく音がすこしでも鳴ると、汗がにじむほどの恐怖反応が条件反射のように起きるというわけです。
実験はこれくらいのことをしますので、僕はちょっと嫌ですね(@_@;)
不快音にトラウマや恐怖心が植え付けられた状態の参加者を、以下の3つのグループに分けます。
- 想像グループ:不快音をできるだけリアルに頭のなかでイメージしてもらう
- 現実グループ:実際に不快音を再び聞いてもらうが、電気ショックはあたえない
- 安静グループ:鳥のさえずりといった自然音を聞く
このような方法で恐怖心に対処し、どのグループがもっとも恐怖心が消えたかをチェックしました。
恐怖心の計測は、参加者の主観的な感想や身体反応のほか、脳波計で神経の活動といった客観的な評価までしました。
これは、かなり具体的で信頼できる調査です!
結果ですが、あえて不快音に触れた現実グループが最も恐怖心が軽減しました!
安静グループと比較した場合、想像グループと現実グループのどちらともが、同じレベルで恐怖心が軽くなっていたそうです。
これは「消去学習」という現象にもとづいた実験で、
- 恐怖に関係する「環境キュー」(特定の臭いや音などといった合図)にあえて触れる
- しかし、本人が恐怖していること・懸念していることは発生しない
などといったステップを繰り返しおこないます。
たとえば、火災によるトラウマ・恐怖心がある場合、
- 燃えているにおいをかいだり爆発音を聞く
という作業をおこない、実際には起きていないということを脳に沁みこませ、『恐怖しそうな状況でも実際は何も起きていない』という事実を学び、やがて恐怖心がなくなるということです。
とはいえ、親からの虐待が原因で、怒鳴られることがトラウマになっている場合、なかなかこの手法が活用しにくいものです。
研究チームは「想像だけでも同じ効果が出ないだろうか?」と思い、今回の実験をおこなったようです。
研究者は、以下のように述べています。
想像グループも現実グループも、等しく恐怖刺激に対する身体的な反応が減っていた。
このデータからわかるのは、現実の体験を模した内面的な刺激が、実際に未来の状況に対する反応を変えるということだ。イメージを使ったセラピーは不安障害に効くし、精神的な活動は基本的な神経回路の活動に影響をあたえる。
嫌な思い出や恐怖心、トラウマは僕らに創造性や可能性を与えますし、苦しい経験は人間的魅力を授けてくれます。
僕らの過去の出来事を、どのように活用していくかがカギではないかな?…というかんじですかね☆
芸術などで表現するのもいいですし、折角の経験です。
僕の場合は、それを後世に残せていければいいと思っています。
「人間としての深みがほしい」
「創造性がほしい」
からという理由で、無理に苦い経験やトラウマを経験する必要はありません。
そのような経験をしたとき、自分の人生の糧になるということを伝えたいと思い、今回の記事を書きました。
自分の経験は、決して無駄にはならないものですよ♪
【参考文献】
[https://sites.google.com/a/wfu.edu/eranda-jayawickreme/?pli=1]
[https://psycnet.apa.org/search?fa=buy.optionToBuy&id=2013-04171-001]
[Attenuating Neural Threat Expression with Imagination.]