感情を上手にコントロールできれば、それはもう言うことはありません!
たとえば、ストレスの影響で本来の実力を発揮できず、仕事やスポーツでふがいない結果を出してしまうことがあります。もし上手に感情をコントロールして、本来の実力をいかんなく発揮できれば、僕らが望む結果を導き出すことができます。
今回ご紹介するのは『リアプレイザル(Reappraisal)』という方法です。
怒りを感じる場面でも、緊張が走る場面でも、この方法を用いることで問題なく実力を発揮することができます。
また、ちょっとしたことでストレスを受けることがありますが、そんなことも簡単にあしらうことができます。
今回のブログを参考に、ストレス知らずのマインドになりましょう!!
≪Contents≫
リアプレイザルについて
『リアプレイザル(Reappraisal)』とは、日本語で『再評価』という意味です。
基本的にこれは認知行動療法の技法で、感情のコントロール法としては有名なものです。
この方法は、怒りや緊張、不安といった感情が起きた原因を変えるというものです。
実のところ、「緊張」といったネガティブな感情のときに起きる人体の反応も、「興奮」といったポジティブな感情のときに起きる人体の反応も、人体の反応という点では変わりません。
なので、人体に起きた反応を、ポジティブな感情ということにして処理するというのが、この方法です。
リアプレイザルは認知行動療法で用いられる方法で、使いこなすには練習が必要です。本格的に取り組むのなら、「認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで」といった書物を参考にするといいですね。
【送料無料】 認知行動療法実践ガイド: 基礎から応用まで 第2版 / ジュディス・S・ベック 【本】 価格:4,950円 |
この方法は、ネガティブな感情を別の視点から見るということもできます。
たとえば、起こっている人と遭遇したとします。
ネガティブな感情というものは伝染しやすく、直接受け入れてしまうと、自分も怒りの感情を抱いてしまいます。
しかし、
「何か嫌なことでもあったのかな?」
「良くない知らせでもあったのかな?」
というように解釈すると、込み上がるハズの感情を落ち込ませることができます。
リアプレイザルは、脳の扁桃体(感情に関する部位)へ直に影響をあたえます。リアプレイザルが上手くなるほど、ネガティブな体験に対する扁桃体の活動は低下していきますので、練習する価値は十分にあります。
リアプレイザルの注意点
リアプレイザルの研究は数多くありまして、2012年のメタ分析によってある程度の効果があると結論を出しています。
基本的に、突発的に起きるネガティブな感情に対しては活用していくには、十分な技法だと思います。
しかし、この技法にも落とし穴のようなものがありまして、ときにこの感情のコントロールがマイナスに働くことがあるそうです。
2016年に出た論文で、そのような話がありましたので、そういった注意点をお話していきます。
これは74人の男女を対象にした実験で、参加者ににオリジナルのスマホアプリをわたし、以下の問いかけをおこないました。
- どのようなストレスを感じたか?
- そのストレスに対してどのように対処したか?
これらを1日に10回、1週間ほど記録し続けてもらいました。
そのうえで、全員の不安傾向や幸福度をチェックしたところ、以下のことがわかりました。
- 「自分がコントロールできる」状況でリアプレイザルを使う場合は、メンタルは悪化する
- 「自分がコントロールできない」状況でリアプレイザルを使う場合は、メンタルは安定する
つまり、不可抗力や自分の力ではどうすることもできない場合はリアプレイザルは有効で、自分の力で解決できる場合はリアプレイザルはむしろメンタルを病んでしまうというわけです。
研究者によると、以下のことが言えるようです。
たとえストレスを感じたとしても、その状況が自分の力でどうにかなるような場合、リアプレイザルを使うと「感情の機能」が損なわれてしまう
ネガティブな感情はときに現状を打開する力を生み出す原動力になるものの、リアプレイザルがその力を抑え込んでしまうということです。
第三者からの八つ当たりはリアプレイザルで回避できるものの、告白の場面でのドキドキでリアプレイザルは使ってはいけないようですね♪
要所要所で使い分けていきましょう!
リアプレイザルの有効活用例
緊張によって本来の実力を発揮できない…。
皆さんも、そのような場面があったかと思います。
スポーツの世界では、この現象を『チョーキング』と呼んでいます。
こういった状況でも、実はリアプレイザルが有効だということがわかっています。実際の実験で、その有効性が実証されていますので、それをご紹介します!
これは2018年に出たカリフォルニア工科大学の実験による論文で、36人の男女が対象に、まずは簡単なテストで全員の「損失回避(得することよりも損を避けることを優先する人間の心理)」レベルを調べてました。
たとえばギャンブルで、「もし勝ったら○○円あげますが、負けたら△△円もらいます」といったケースでは、得する方を優先するなら損失回避レベルが低く、損する方を優先するなら損失回避レベルが高いとされています。
このことを調べた理由ですが、チョーキングが起きやすい人は、この損失回避レベルが高い傾向があることが過去のデータで明らかになっているからです!
つまり、チョーキングが起きやすいスポーツ選手は、
『勝つことよりも、負けないことを優先する!!』
という気持ちが芽生えていて、積極的なプレイを回避する傾向があるそうです。
事実として、損失回避レベルが高い人は線条体(体の動きをコントロールする脳のエリア)が働かなくなる現象も確認されています。スポーツ選手が思い通りに身体を動かすことができない理由が、ここにあります。
カリフォルニア工科大学は、続いて被験者たちに
「コンピューターゲームに勝てば50ドルをあげますが、負けたら50ドルをいただきます。」
というルールの下でコンピューターゲームをプレイしてもらうように指示しました。
前述のとおり、損失回避レベルが高い人ほどパフォーマンスが落ちるはずですが、ここで全体を2つのグループにわけて実験をしています。
- 普通にゲームをしてもらうグループ
- 「自分はすでに50ドルを手にしている。このゲームは、その50ドルをキープできるかどうかを試すものなのだ」と想像してもらってからゲームをしてもらうグループ
つまり、リアプレイザルをしてもらってからゲームに臨んだグループを作って、普通のグループを比較したというわけです。
この実験の結果では、リアプレイザルをしてもらったグループの方が大きな成果を上げています。
その他、この研究では被験者のガルバニック皮膚反応(皮膚を流れる電流の抵抗が皮膚の湿気で低くなること)も調べてて、リアプレイザルを行なったグループ全員が、ストレスレベルが大きく減少していました。
前述では、自分で解決する場面ではマイナスになると説明しましたが、損失が怖いのなら『既に手にしている』と解釈すれば問題ないというわけです。
感情のコントロール術の1つで、認知行動療法で用いられる「リアプレイザル」をご紹介しました。
本格的なリアプレイザルはしっかりと勉強する必要がありますが、日常で使うのなら、以下のようにすると良いかと思います。
- 自分ではコントロールできない状況:不可抗力なら「こんな日もある。」と考え、八つ当たりされたのなら「いきなり怒鳴られたけど、なにかあったのかな?」と一呼吸して、解釈の仕方を変えてみる。
- 自分でコントロールできる状況:試合なら「自分は既に勝っている。あとは勝ち点を維持する・実力を試すだけだ。」試験なら「既に合格している。これは自分の実力を維持するための試験なんだ。」という考え方にする。
大事な局面で解釈の仕方を間違えると、現実逃避になって実力が出せなくなってしまいます。
損失が怖いから強ばってしまうわけで、既に手にしていると解釈すれば問題ありません。
以上、損失回避レベルが高い人には特にオススメの、リアプレイザルという技法のお話でした☆
【参考文献】
[Dealing with feeling: a meta-analysis of the effectiveness of strategies derived from the process model of emotion regulation.]
[The Wisdom to Know the Difference: Strategy-Situation Fit in Emotion Regulation in Daily Life Is Associated With Well-Being]
[Reappraisal of Incentives Ameliorates Choking Under Pressure and Is Correlated with Changes in the Neural Representations of Incentives]