出張やプロジェクト、病気などで、どうしても筋トレができない状況があると思います。
筋トレが習慣化していると、なんとなくもどかしくなりますし、せっかく鍛えた肉体が衰えてしまう心配があります。なので、どれくらい筋トレしない日が続くとヤバいのかは、知っておいておいた方が安心するでしょう。
計画も立てやすいし、メンタルにもいいですからね!
ということで、今回は『筋トレの休養期間』について解説していきます。
真摯に取り組んでいる人だと、特にこのあたりは不安になってくるので、データとして理解していると取り越し苦労にならずに済みますね。まあ、ガチ勢だと体感や実践で個人的に感覚を掴んでいるのでしょうけど、アドバイスする立場として知っておくといいのかな?…と思います。
≪Contents≫
トレーニング歴が浅い場合
まずはトレーニング歴が浅い場合(およそ6ヶ月)から解説していきます。
2012年に東京大学がおこなった実験で、筋トレ未経験の25歳の若者14名を対象にした研究があります。
実験内容ですが、参加者に2つのグループに分かれてもらい、週3回のペースでベンチプレスをしてもらいました。
- 6週間のトレーニングのあと、3週間の休養期間を設けるというサイクルで筋トレをおこなう
- 休養期間を作らずに、週3回のペースで筋トレをおこなう
そして、具体的なトレーニング内容がコチラです。
- 1RM(1回しか持ち上げられない重さ)の75%のウェイトを使う
- トレーニングは10回3セットで、インターバルは2〜3分とする
- ウェイトの重さは3週間ごとに調整し、もし3セット目で12回以上できたら、次回は5%重さを増していく
実験期間は24週間で、実験後の結果がコチラです。
- 最大筋力はどちらのグループも、およそ50%発達していた
- 胸や腕の筋肉の増え方にも、両グループで差はみられなかった
明らかにトレーニング量が違うにも関わらず、筋力と筋肉量が両グループとも同様に増えたようです。
最終的な結果自体は一緒であるものの、途中経過については違いがあります。
休養期間がないグループはゆるやかに筋肉が増えていくものの、休養期間があるグループは休んでいる間はわずかに筋肉が減ってしまいます。しかし、再開すると休んだ分だけ筋肉の成長速度が上昇して、最終結果が同じように納まったようです。
トレーニング歴が浅い人が対象で、また、参加者が少ない実験なのでどこまで適用できるかはわかりません。
この3週間については、あくまでも運動愛好家など、いわゆる一般の方々なら、3週間くらいは休養をとっても問題はないと思います。もし、やる気が湧かなくなったら、3週間までに調子を整えていくのがいいでしょうね。
トレーニング歴が長い場合
次に、トレーニング歴が長い場合(最低でも週3回の筋トレが習慣化している人)について解説していきます。
2017年にベイラー大学がおこなった実験で、20名の男性を対象にして、主に2つのポイントをもとに調査しました。
- 2週間の休養期間を設けることで、筋力と筋肉量に悪影響があるのか?
- 休養期間内にプロテインや糖質を補充することで、筋肉の損傷を抑えることはできるのか?
具体的な内容ですが、参加者全員に以下のようなメニューをこなしてもらいます。
- トレーニングメニューは、ベンチプレスなどの上肢の筋トレ9種とレッグプレスなどの下肢の筋トレ7種
- それぞれ1RM10回ずつおこなう
- 週4回のペースで普通の筋トレを4週間おこなう
- 2週間、休養期間を設ける
- ふたたび、週4回のペースで普通の筋トレを4週間おこなう
この際に、参加者を以下の2つのグループに分けました
- 毎日25gのプロテインを飲む
- 毎日25gの糖質を飲む
その結果、以下のようなことがわかりました。
- 体型の変化:実験期間中の全体を通して、参加者の筋肉や脂肪量には違いがなかった。また、筋肉の横断面積にも違いはなかった(=筋肉は減らなかった)
- 筋力の変化:休養期間、参加者全員の下肢には違いがまったく確認されず、筋持久力も特に変わらなかった。また、最初の4週間でレッグプレスの1RMは変わらなかったが、休養期間後、再び4週間のトレーニングを再開したところ、レッグプレスの1RMがアップした。
- サプリの効果:プロテインと糖質では、筋肉量と筋力にまったく違いが現れなかった。
以上のことから、トレーニング歴が長い人の場合は2週間の休養期間を設けても問題なく、プロテインや糖質で補強する必要もないということです。
一度鍛え上げた筋肉は、そう簡単には減らないようです。
とはいえ、2週間の休養期間のあとにトレーニングを再開すれば、さすがに疲労感が大きいと思います。なので、導入器官として、普段よりは若干易しいメニューを2週間かけておこなうのがいいでしょうね。
補足:有酸素運動の場合
心肺機能に関しては、筋肉よりも能力の低下が著しいことがわかっています。
有酸素運動のトレーニング歴が長い人の場合、1984年という古いデータではありますが、7名の持久走者を対象にした調査では、始めの21日間の休養期間で、最大酸素摂取量(=体力)が7%低下しました。そして、筋肉内のクエン酸シンターゼおよびコハク酸デヒドロゲナーゼ(持久力に必要な血中の酵素)は、12日間の休養期間で50%低下したことがわかっています。
有酸素運動のトレーニング歴が浅い人の場合、2001年のデータでは、2ヶ月間の有酸素運動を続けてもらい、その後、4週間ほど休養期間を設けるように指示したところ、完全に心肺機能が元に戻ってしまったことがわかっています。
つまり、心肺機能をベストの状態で維持したいと思った場合、1週間あたりから体力が落ち始め、長くても10日間が限界と言えます。
そして、1ヶ月経ってしまうと、厳密には違いますが、何もしていない人と大差ないレベルになると言えます。
覚えやすいように簡単にまとめると、
- 筋トレの休養期間は3週間(ガチ勢は2週間)が限界
- 有酸素運動の休養期間は1週間が限界
という感じです。
年齢によっても変わってきますが、おおよその目安が上記のとおり。
出張先にジムがないなら、自重トレも考慮したり、仕事が立て込んでいても気分転換に筋トレはしておいた方がよさそうですね。
【参考文献】
[Comparison of Muscle Hypertrophy Following 6-month of Continuous and Periodic Strength Training]
[Time Course of Loss of Adaptations After Stopping Prolonged Intense Endurance Training]
[Cardiorespiratory and Metabolic Characteristics of Detraining in Humans]