なかなか良い睡眠をとれない方が、多く見受けられます。
鍼灸師をしている身としては、どうにかして差し上げたいものです。いわゆる“睡眠障害”というものは、様々な要因がありますので、「睡眠の質を上げるなら、コレだっ!!」と伝えても、その人によって決定打になるわけではないので、詳しく調べていかないとハッキリしないものなのです。今回は、そんな睡眠の質を上げるにあたり、「それだったら、相手に思いやりを持つ精神があれば良いんじゃない!?」な話をしていきますので、どうぞ参考にしていってください。
まさか、性格と睡眠の質がリンクしているなんて、思いもよらないですよね♪
共感能力と睡眠の質の関係性
これは2023年に発表された論文でして、1980年にフィンランドで開始された調査データを用いられたものとなっております。
この調査では、参加者を数回(1983年、1986年、1989年、1992年、1997年、2001年、2007年、2012年、2017年)、37年にわたって追跡し、収集された情報を分析します。
そして、
- 睡眠パターンの評価
- 健康行動と働き方の状況
- 抑うつ症状に関する情報
etc.
などを抽出し、それぞれに「思いやりと睡眠の質と、どのような関係性があるのか!?」をチェックしていったそうです。
データの分析には、回帰モデル、マルチレベル モデル、およびクロスラグパネルモデルを使用しております。全体のサンプルサイズは、1980 年のベースライン測定で3596 とのこと。サンプルは、ベースラインで3~18 歳までの 6 つの年齢コホート(1962 年、1965 年、1968 年、1971 年、1974 年、または 1977 年生まれ)で構成されています。年齢、性別、幼少期と成人期の社会経済的地位、体格指数、健康行動、労働条件を考慮して調整しております。
ちなみに、ここでの“思いやり”の定義は、「他者の苦しみに対する関心と、それを軽減したいという欲求を経験する人の性質」としています。
その結果、わかったことはといいますと、
- 思いやりのある人は、一般的に睡眠不足を感じることが少なく、睡眠障害も少なかった。しかし、抑うつ症状で調整すると、思いやりと睡眠パターンとの関連は消失した。
- 思いやりのある人は、11年後の睡眠障害も少ない傾向があった。しかし、こちらも抑うつ症状を調整すると消失した。
- 思いやりの高さが睡眠の問題を低下させるのであって、その反対の因果関係はない可能性が高いこと。
つまり、他者への思いやりがある人は抑うつの症状を起こしにくく、それが影響して睡眠障害が悩まされずにすんでいるということ。過去のデータでも、「他者の苦痛を積極的に緩和させると、自身の苦痛も軽減する!」という報告もあり、思いやりの力は自身の苦痛からも解放され、副交感神経が優位になりやすくて睡眠の質が上がるのでしょうね!
注意点としては、この研究は、すべての評価が自己申告をベースにしているということ。
そういったこともあり、バイアスがかかっている可能性は十分にありますので確定事項とは言い切れないことをご留意ください。とはいえ、思いやりが自身と他者双方の心の健康に良いのは間違いないので、普段から思いやりを心がけた方が徳を積めますね☆
【参考文献】
[High compassion predicts fewer sleep difficulties: A general population study with an 11-year follow-up]
[Regulating negative emotions of others reduces own stress: Neurobiological correlates and the role of individual differences in empathy]