「HSP(Highly Sensitive Person = 非常に敏感な人)」は、環境の微妙な変化に気づきやすく、強い刺激に弱い性質のことで、一時期は“繊細さん”として流行しておりました。
僕のブログでも何度か取り上げておりまして、正式な病名ではなく、医療機関などで使われる概念ではありません。HSP研究の第一人者であるエレイン・アーロン氏によると、この気質には遺伝的要素が大きく絡んでおり、全人口の15~20%の割合で存在しているそうです。とはいえ、HSPに関する研究も増えていえ、陰キャや陽キャみたいな気質を表現する考え方としては便利だと思いますね。イメージ的には、照れ屋や内気みたいな感じです。
今回は、そんな繊細な人が世の中で生きにくい理由について解説していきますので、よろしくお願い致します♪
HSPが日常生活で起こす特徴的な反応
これは2022年に出た、HSPに関する初の縦断的調査となっております。
今回の調査で研究チームが明らかにしようとした内容は、「HSPは、ネガティブな出来事に対してのみ反応するのか、それともポジティブな出来事に対しても反応するのか。」というところ。HSPの人がネガティブな出来事に弱いのは想像に容易いですが、だったら、その感受性の高さがポジティブな出来事にも過剰に反応して、人一倍楽しめるのではないのか?…ということを調査したわけです。
どんなことにも過剰反応し、それがポジティブなことでも過剰反応するのなら、HSPの利点といえますね!
調査の内容ですが、239 名(男性 129 名、女性 108 名、ノンバイナリー 2 名、年齢範囲 20 ~ 72 歳。M = 36.57、SD = 9.47)の参加者を対象に、以下のアンケートに答えてもらったそうです。
- HSPテスト:「強い感覚の刺激に圧倒されやすいか?」「日常の変化に動揺するか?」などの文章に対して回答する。
- 日常生活の満足度: 「今日の生活にどの程度満足しましたか?」という質問に回答する。
- 日常の自尊心:「今日は自尊心が高かった」という項目にどれだけ同意するかを回答する。
- 日々のポジティブ/ネガティブ感情: 感情評価指標の13の感情項目(例:怒り、熱狂、幸福、孤独、リラックス)にどれだけ同意するかを回答する。
- ネガティブな出来事の評価: 「その経験に、どれぐらいダメージを受けたか」などの文章にどれだけ同意するかを回答する。
- 出来事をどう受け止めているか: その日に起きた最もポジティブな出来事とネガティブな出来事のことを、どのように解釈して、どのように評価したかを回答する。
この作業を21日ほどおこなってもらい、HSPの人たちが見ている世界にどのように感じているかをチェックしていったそうです。
この調査でわかったことですが、
- HSPの人は、ネガティブな出来事“のみ”強く反応する。
- HSPの人は、より主観的に強いネガティブな出来事に対してネガティブな感情をより強く経験し、自尊心や自己効力感、生活満足度が低下する。
- HSPの人は、より主観的に強いポジティブな出来事に対して、ポジティブな感情や生活満足度がより大きく増加することがなかった。
要するに、HSPにとっては、悪い出来事は大ごとに捉えるものの、良い出来事はあまり印象に残らないので、これでは社会で生きにくいのも納得してしまいます。一般的な感性の人でも、良いニュースよりも悪いニュースのほうが印象に残りやすいもので、それがHSPの人には顕著なのでしょう。
このことに対し研究チームは、
感覚処理感受性が高い人ほど、日常的に発生する否定的な出来事に対してかなり強い反応を示すものの、肯定的な出来事に対してはその限りではない。このことを受け、我々の調査結果は、それらの個人に対する心理療法の情報提供に役立つ可能性がある。
具体的には、治療的介入を考えると、非常に敏感な個人の否定的な出来事に対する感情的な反応を考慮に入れることが重要であろう。現在の調査結果を考慮すると、マインドフルネスに基づく治療が有効である可能性がある。
ということで、HSPな方々には、マインドフルネスに基づくメソッド(瞑想など)に臨むのが良いとコメントしております。
マインドフルネスは、ネガティブな感情を軽減しながら、ポジティブな感情を増加させやすく、HSPにはもってこいと言えるでしょう。HSPはビッグファイブでいう神経症的傾向が高い(不安感が強いなど)ので、メンタルヘルスの問題(うつや心的外傷後ストレス障害など)が常につきまといます。
瞑想をして、メンタルを調整するのが、社会で生きていく秘訣になりそうですね☆
【参考文献】
[Sensory Processing Sensitivity and Reactivity to Daily Events]