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運動能力は、遺伝子によって、どれくらい運命づけられているのか!?

幸か不幸か、研究によって、人間の特性は生まれつきの遺伝子によって決まることが多いことがわかっております。

たとえば、知性や性格は、両親の遺伝子によってある程度決定づけられます。もちろん、遺伝子“だけ”で運命が決まってしまうわけではありません。どういった環境に身を置くかによっても人生が運命づけられるため、生まれ持った能力だけですべてを決めるのは早計といえるでしょう。

今回の投稿は、そんな遺伝子にまつわることで、「運動能力は、遺伝子によって、どれくらい運命づけられているのか!?」についてお話しです。わかっている段階では、

 

  • 走力
  • 跳躍力
  • 心肺機能
  • 平衡感覚

etc.

 

といった機能は、けっこうな割合まで遺伝子によって運命づけられると推察されております。
更には、「運動能力は、遺伝子と環境のどちらで決定されるのか?」を追究してくれたものがありますので、それをご紹介していきます。

 

 

少年期における身体能力の遺伝的要素

 

これは、2024年に出たポルトガルでおこなわれた研究で、ポルトガルで6~18歳までの双子198組を対象に身体能力の試験をしたものとなっております。

対象となった双子全員に15項目の体力テストをおこない、その結果を分析して、個人差のうち、遺伝子によるものと環境によるものとを比較していったというものです。ここでの大きなポイントは、対象となった双子のうち、78組が一卵性双生児(=まったく同じDNAを共有)というところです。残りは二卵性双生児(DNAの平均半分を共有)で構成されていて、とある体力テストの結果が、一卵性双生児が二卵性双生児よりも似ている場合、より遺伝的要素が大きいと考察できるということです。

補足ですが、この研究での“環境”の定義は、育った地域、裕福さ、スポーツをする機会、ケガの体験、優秀なコーチに出会えたかどうかなどとしてます。

 

ちなみに、この研究でおこなわれた体力テストは、以下のものとなっております。

 

  • フラミンゴ・テスト(片足でバランスをとる)
  • プレート・タッピング(2枚のプレートの間をできるだけ早く手を往復させ、反応時間と素早さをテストする)
  • シット・アンド・リーチ(座位でつま先を触る)
  • 左右別々にシット&リーチ
  • 立ち幅跳び
  • ハンドグリップ
  • 上体起こし
  • ベント・アーム・ハング(懸垂の一番上の位置をできるだけ長くキープする)
  • 5m × 10回のシャトルラン
  • 12分間のラン・ウォーク
  • トランク・リフト(床に横たわり、お腹と上半身を地面からできるだけ高く持ち上げる)
  • カール・アップ(部分的な上体起こし)
  • 腕立て伏せ
  • 20mシャトル・ラン(ビープ音についていけなくなるまで20mをどんどん速く走る)

 

上記のとおり、全身の筋力や心肺機能を測る内容となっております。自分の身体能力をチェックするのにも使えそうな感じがします♪

 

比較して分析していった結果、次のようなことがわかったそうです。

 

  • 総括すると、遺伝子は身体の能力に大きな役割を果たしており、遺伝的な寄与は52~79%にまで及んでいた。 この遺伝率の範囲は、身長や小児期のBMIの遺伝率と同等か、わずかに低い程度である。
  • 全体として、異なるテスト間の相関関係は「低~中レベル」だった。すなわち、とある体力テストで好成績だった場合でも、他の体力テストの成績も良好かどうかは“まずまず”程度しか予測できない
  • また、他の体力テストと最も相関が低かったのはトランク・リフトだった。よって、体幹を持ち上げる能力は、たとえばダッシュ力やジャンプ力とは別物の能力だと考察できる。
  • 反対に、腕立て伏せ、立ち幅跳び、20mシャトル・ランの3つは、他の体力テストと最も相関があった。よって、合的な身体能力を簡単に評価したいなら、この3つの体力テストで計測するのが最適であると言える(あくまでも、簡易的にチェックするならという話し)。
  • 個別の能力で見てみると、立ち幅跳びやシャトル・ランなどの瞬発力は、有酸素運動で求められる持久力よりもはるかに遺伝性が強い可能性がある。つまり、短距離走は遺伝的要素が大きいが、長距離走は努力で十分カバーできると言える(“努力”という才能は、また別の話し)。
  • 柔軟性(シット&リーチ)と有酸素運動(12分間ラン・ウォークで測定)は、遺伝的要素が最も大きいと思われる。

 

といったように、基本的な身体能力は、遺伝によって半分から大部分が決定されてしまうことがわかったそうです。

また、僕なりに簡潔にまとめますと、

 

  1. とある能力が秀でているからといって、他の能力もズバ抜けているとは限らない(身体がしなやかだからといって足が速いわけではないし、身体が硬くても足が速かったりする)
  2. 体幹の強靭さは、遺伝的要素とは、あまり関係ない“かもしれない”
  3. 身体能力を簡易的に評価するなら、腕立て伏せ・立ち幅跳び・20mシャトル・ランの3つを見ると良い“かもしれない”
  4. 身体の柔らかさと心肺機能は、ほとんど遺伝で決まる
  5. とはいっても、瞬発力と持久力なら、持久力の方が伸び代がある

 

注意点というかは、身体能力は、生まれた段階ですべてが決まる“わけではない”ことは伝えておきたいです。

あくまでも、生まれた段階でのスタート地点での話ということを忘れないでください。努力などによる後天的要素でも、僕らは十分に身体能力を高めることができるため、最終的に身体能力がどのレベルにまで到達するかを示すものではないことをご留意ください。トレーニングの能力も部分的に遺伝子に影響されますが、ほとんどの場合、パフォーマンスレベルとは異なる遺伝子に影響されます。

「これは運命だから…」と諦めるのは早い!…っていうことですね☆

 

 

【参考文献】
[Genetic Regulation of Physical Fitness in Children: A Twin Study of 15 Tests from Eurofit and Fitnessgram Test Batteries]

 

 

 

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