他者を操って搾取しようとする人間「マキャベリアン」。
友人や会社の同僚、上司などが上手に自分の弱みを握り、従わざるを得ない状況に追い込まれるなんて、非情ながらもよくある光景です。僕も整骨院に勤めていたとき、このような上司がいたので、ある意味、良い勉強になりましたね…。
このような人たちは、心理学的には「マキャベリアン的性格」 を持っている可能性が高いとされています。いわば、自身の利益のために残酷で打算的で、他者を操ることにためらいがなく好んでおこなう人物のこと。別名「マスター・マニピュレーター(人間搾取の達人)」などと呼ばれているそうです。
このマキャベリアン的性格特性なのですが、
- 戦略的で計算高い:あらゆる状況において、最も自身に有利な結果が出る選択肢を取る。
- 他者を操る:他者を利用することに罪悪感がなく、自身の目的達成のために他者を操作しようとする。
- 猜疑心が強い:他者の親切や善意には必ず目的があると考え、他者を信じない。
- 弱点を見せない:自身の弱点をさらけ出すことがなく、他者に自身の弱点を利用させまいとする。
といったことが定義されております。
実際のところ、こういった“ヤバい人”は日常生活に潜んでおりまして、なるべくなら避けておきたいもの。今回は、そんなヤバい人を見抜く方法について解説していきます!
マキャベリアンの性格特性と見抜く方法
紹介する論文は2023年にものでして、先に結論を申し上げますと、基本的にマキャベリアンを見抜くことは難しいです…。
順を追って説明していきますと、この研究では、マキャベリアンの特性を「アプローチ(積極的獲得)」と「アボイダンス(損失回避)」という2つに分けて調査を実施しております。この2つの特性については、以下のとおりです。
- アプローチ型マキャベリアン:権力や支配を求める傾向が強く、他者を抑制し、自分の思い通りに操作することに満足感を得るタイプ。
- アボイダンス型マキャベリアン:自分の弱みを見せないように守りを固め、他者を信頼せず、危機回避の行動を取るタイプ。
簡単にいうと、攻撃型のマキャベリアンと守備型のマキャベリアンの2つの特性があるそうです。で、研究チームは、それぞれの特性を調査することで、研究の精度を高めようとしたわけです。
この特性を測定するために、研究チームは次のような質問を用いております。
- 私は権力を強く求める傾向がある。
- 私は対人関係の中で命令するが好きである。
- 私は他者をコントロールするのが好きである。
- 他者を完全に信頼することは、自らトラブルに飛び込むようなものである。
- 私が弱みを見せることで、他者はそれを利用するだろう。
- 人は下心があるからこそ、友好的になれるのである。
- あらゆる人間には悪意を持っているので、それを探るべきだ。
この質問で参加者のマキャベリアンレベルを評価し、すべてのデータをまとめたところ、以下のデータが得られたそうです。
- 第一としてマキャベリアンの特性を捕捉することが非常に困難:研究チームの質問票では、マキャベリアンの特性をうまく捕まえることができなかった。そもそも論としてマキャベリアンは自分をよく見せようとするため、性格テストに素直に回答しないことが十分にある。
- マキャベリアンとサイコパスとの違いが曖昧:マキャベリアンとサイコパスの両者とも、「他者を操作する」や「道徳的感覚が希薄である」といった共通点がある。明確な差といえば、サイコパスには「衝動的感情が希薄」で「リスクに対して恐怖心がない」、そして、「他者の痛みや感情への共感能力が欠如している」のが特徴。それに対しマキャベリアンは、「戦略的で冷静」な側面があり、「衝動的な行動がなく計算高い」という側面があり、他者を操ることが上手である。とはいえ、やはりマキャベリアン特性とサイコパシーの完全な区別は難しく、マキャベリアンたらしめる特徴としては、「猜疑心」や「弱みを見せない態度」 にあり、この特徴がサイコパスとは大きく異なる特徴である。
一般人も正直に答えることがないのですから、ガチのマキャベリアンなら、なおさら正直に答えるワケがないといったらそれまでです。
まずですが、ナルシストやサディストに並ぶヤバい人の性格の特徴もそうですが、ヤバい人の特徴は、大体は似通っていることが多いです。でもって、「マキャベリアン特有の大きな特徴とはコレだ!」っていうと、メチャクチャ疑い深くて自分をさらけ出すことは決してしないという点なんでしょうね…。
それがわかったとして、では、「マスター・マニピュレーターを見抜くにはどうすればいいのか?」っていう点です。マスター・マニピュレーターから自分の身を守るためには、次のようなポイントを実践すると良いとしています。
- 違和感に頼る:人間の直感は、思いのほか正確です。少しでも「よくわからないが、この人は信用できない」と違和感があった場合、その直感に頼った方が良い。マキャベリアンは魅力的に見えることが多いものの、その裏にある打算や計画を見抜くことが重要となる。
- 行動様式を観察する:人を支配しようとする態度がある、自分の意見や要求を押し付けてくる、他者の弱点を詮索する、他者の弱点を利用しようとする、などの行動様式が確認された場合、とりあえず警戒することが大切。
- 境界線を設定する:マキャベリアン的性格特性の人へは、自分の価値観や決め事を明確にし、それを超えさせない。「あまり疑うのも良くないし…」や「さすがにかわいそうだな…」と思ってマキャベリアンの要求等に従うと、それこそ相手の術中なので必ず避ける。
- 感情的にならない:マスター・マニピュレーターは、感情を揺さぶりをかけて自分の判断力を奪おうとする。冷静にマキャベリアンの行動様式を分析し、感情に流されないことを心がける。
といった方法がベスト…というより、上記の防衛手段しか方法がないと思った方が良いでしょう。
マキャベリアンの2大特性の「他者を信用しない」と「弱みを見せない」が強く現れているなら、警戒心を強めた方が良いかもしれません。ビジネス等をしていると、多少なりとも“駆け引き”などで、戦略的な態度を取ることがあるでしょうが、一般人なら、さすがに譲歩や妥協などがあったりしますが、非人道的なところまでいかないものです。
また、僕個人としては、不自然なくらい信用しているそぶりを見せたり、変に弱点をさらけ出したりするのも、計算高さが垣間見えるので警戒してしまいますね~~☆
【参考文献】
[Personality Functioning, Problems in Living, and Personality Traits]