運動のために糖質が必要なのは言うまでもありません…。
パフォーマンスそのものに影響しますし、糖質が足りないと筋肉を分解してエネルギーを作ってしまいます。
それだけは避けたいものです。
糖質を補給するのはいいとして、どのタイミングが良いのでしょうか?
たとえば「運動前は糖質を摂らない方が痩せる!」という話がありましたが、それが正しいのか?
今回は、栄養補給のタイミングについて解説をしていきます。
≪Contents≫
運動前の糖質摂取による体脂肪燃焼について
まずはフロリダ州立大学の研究をご紹介します。
この実験はランニング歴の長い、心肺機能の高い10名の男性を対象におこなわれました。
実験の内容ですが、運動の30分前に以下の3種類のドリンクのいずれかを飲んでもらっております。
目的としては、運動前に摂取した糖質の量とGI値の違いによって、体脂肪燃焼に差が出てくるかどうかを調べたというわけです。
- グリセミック指数が低いスターチ75gが入ったドリンク
- グリセミック指数が高い糖質75gが入ったドリンク
- カロリーオフのドリンク(プラシーボグループ)
そのうえで、さらに以下のような3パターンの運動をおこない、体脂肪燃焼に差が出てくるかどうかも調べていきました。
- 最大酸素摂取量の60%で30分のランニング
- 最大酸素摂取量の75%で30分のランニング
- 5kmのタイムトライアル
その結果、得られたデータが以下のグラフのとおりです。
↓ ↓ ↓
グラフの「PL」がカロリーオフドリンクで、「G」が高GI値ドリンク、「UCAN」は低GI値ドリンクです。
体脂肪燃焼に関するグラフがAで、糖質の濃度に関するグラフがBです。
体脂肪燃焼を調べるにあたり、各パターンによって、皮下脂肪からどれだけグリセロールが放出されたかを比較しております。今回の話で重要なグラフAをみていただきたいのですが、どのパターンもほとんど差がありません。
つまり、運動前に糖質を摂っても摂らなくても体脂肪燃焼とは関係がないということです。
ついでに、運動のパフォーマンスの結論についても言われていて、GI値によって運動能力が上下に変動するわけではないそうです。ですので、GI値を抑えても、特別パフォーマンスが上昇するわけではありません。
国際スポーツ栄養学会によるベストな栄養補給タイミング
体脂肪燃焼に関しては、運動前に糖質を摂っても摂らなくても、特に影響はありません。
基本的に筋肉を落としたくはないので、糖質は摂っておくのが最善かと…。
当然ですが、運動の効果を最大限にするためにも栄養補給は必須です。
脂肪を燃やすのもそうですが、高負荷のトレーニングができますし、筋肉がつきやすくなりますからね。
このレビューは、国際スポーツ栄養学会が過去の良質なデータをまとめた、『三大栄養素の適切な補給タイミングの客観的なガイドライン』となっています。
大まかな要点を書き出しましたので、どうぞ参考にしてください。
糖質の補給タイミング
■炭水化物の適切な量
体が溜め込めるグリコーゲン(糖質の備蓄)は380〜500kcalほどです。
筋トレや有酸素運動を激しくするには不足してしまいます。
このレビューでオススメしている摂取量は、1日につき体重1kgあたり5~12gとしています。
特にHIITといった激しいトレーニングをする日は最低でも1kgあたり8gは摂ってください。
また、運動中にグリコーゲンが枯渇してしまったら、以下の3つの手法でリカバリーしましょう!
- 1時間に体重1kgあたり1.2gの糖質に加え、GI値が70以上のものを補給しましょう。
- グリコーゲン合成率を高める為にも、体重1kgあたり3〜8mgのカフェインを補給しましょう。
- 糖質を摂るときは、グリコーゲン合成率を高める為にもタンパク質も一緒に補給しましょう。1時間に体重1kgあたり0.8gの糖質と体重1kgあたり0.2〜0.4gのタンパク質を組み合わせがベストです。
■高負荷のトレーニングをおこなう場合
一回の運動につき、60分以上の高負荷の運動(最大酸素摂取量が70%以上)をする場合、グリコーゲンがすぐに不足します。
それを防ぐためにも、1時間ごとに30~60gの糖質を補給しましょう。
また、大量の発汗をしていることですから、6~8%の電解質を含んでいることがベストです。
■筋トレ中の糖質補給
数々の研究によって、筋トレ中に糖質を補給したほうがグリコーゲンが再補充され、血糖レベルも最適化されることがわかっています。
このレビューでは、おおよそ8〜12回の筋トレを3〜6セットずつ、身体全体をまんべんなくトレーニングすることを想定しています。その場合、トレーニングの合間に、体重1kgあたり0.8gの糖質と体重1kgあたり0.2〜0.4gのタンパク質の栄養補給を推奨しています。
これにより、筋肉へのダメージを最小限にすることができ、また筋グリコーゲンの回復を改善することができます。
タンパク質の補給タイミング
1日を通してよく身体を動かす人は、以下のことを守った方が、引き締まった体型になります。
仕事でも身体をつかうを想定した場合、それも踏まえたタンパク質摂取を意識する必要があります。
具体的に言いますと、
- 1回の補給につき体重1kgあたり0.25〜0.40 gを摂りましょう。タンパク質を摂るタイミングは、3〜4時間おきにした方が合成率が高い。
- 1回の補給のタンパク質摂取量は10gを下回らないように気をつけましょう。下回ると筋肉のタンパク質合成の効率が悪くなります。
補足ですが、3~4時間というのはアスリートレベルを想定しています。
一般の方々の場合、食事をする時間をキチンと守ることが大切です。
さらに、就寝前に30〜40gのカゼインプロテインを飲むと、代謝とタンパク質合成の両方が上がりますので、本格的に筋肉をつけたい人にはオススメです。炭水化物もそうですが、就寝前のタンパク質摂取も睡眠の質が上がりますので、やってみても良いかと思います。
脂質の補給タイミング
このレビューでは、残念ながら『脂肪の適切なタイミングについて調べた調査は、またちゃんと形になっていない。』ようです。
このレビューを発表した段階では、脂質のベストな補給タイミングがハッキリとしていません。
なので、今後の研究によって明るみになることを期待して、それを待つ必要があります。
最後にこのレビューでは、『夜よりも日中に食事量を集中させた方が体型が改善する』ということを強くオススメしています。
ノッティンガム大学の実験でいうと、平均年齢が34歳の肥満ぎみの女性80名を対象にしたものでは、
カロリー配分=朝食15%、間食15%、昼食50%、夕食20%
これを12週間追いかけたら、夕食に食事量を集中させたグループよりも、平均して1.42kg多く体重が減少したそうです。ちなみに、インスリン抵抗性も大きく改善したようです。
といったことで、食事前は糖質を補給しつつ、各栄養素はガイドラインを参考に栄養補給をしていけばよろしいでしょうね☆
【参考文献】
[Adipose Lipolysis Unchanged by Preexercise Carbohydrate Regardless of Glycemic Index.]
[International society of sports nutrition position stand: nutrient timing]