「仕事の繁忙期で時間がとれない…」
「ケガであまりトレーニングができない…」
などの理由から、トレーニング量を減らさないといけない場面があるかと思います。
その際、『トレーニング量を減らしても体力と筋力が減少せずに済む「最低ライン」』はどのあたりなのか?
今回は、そのことについて取り上げていきます!
≪Contents≫
身体的パフォーマンス維持に必要な最低限のトレーニング量
これは2021年に出たアメリカ陸軍環境医学研究所のチームによるレビューでして、「現在の体力や筋力を維持するために必要なトレーニング量はどれくらいなのか?」を調査してくれたものです。
これは過去の「トレーニング量」に関するデータをまとめてくれていまして、
- 頻度:1週間のトレーニング回数
- 量:持久力トレーニングの時間、またはセット数やレップ数
- 強度:トレーニングの負荷
という3つの要点について、大きな結論を出してくれてます。
大まかなポイントを抜粋しますと、以下のようになります。
持久力の維持
持久力維持に必要なトレーニング量についてですが、主に1980年代初頭に行われたデータが元となっております。
週6日の高負荷のトレーニング(最大心拍数の90〜100%に達する強度で40分間のサイクリング)を10週間続けた結果、VO2max(心肺機能の指標)が20〜25%ほど改善したとのこと。その後の15週間、トレーニングを週2日〜週4日に減らしてもVO2 maxは新しい数値のまま減退しなかったそうです。
これらのデータをもとに、著者は「トレーニングの量と強度を維持する限り、週2回程度のセッションでも問題ない」との結論を出しております。
ただし、一方で著者は「VO2maxを維持することと、長時間の競技の持久力を維持することは同じではない」と注意喚起しております。あくまでも週2回のトレーニングで心肺機能は維持できるものの、競技のパフォーマンスが維持できるわけではないということです。
また、上記のテストでは「トレーニングのセッション時間」と「強度」もチェックしていまして、次のような結論を出してます。
1回あたりのトレーニング時間を13分または26分に短縮した場合(=ベースラインの時間を1/3または2/3に短縮した場合)も、15週間にわたってVO2maxの向上が維持されました。ただし、短時間持久力はどちらのグループも維持されたものの、13分に短縮したグループは2時間ランニングのテストでは成績が悪化しました。トレーニング強度を1/3に落とした場合(=最大心拍数の90〜100%から82〜87%に下げた場合)、VO2maxと長時間持久力が低下し、2/3に落とした場合(61〜67%に下げた場合)は、トレーニングの恩恵がほとんど失われたようです。
総括すると「トレーニング頻度と時間は短縮してもいいが、負荷だけは落としてはいけない」ということでしょう。
筋力の維持
筋トレの研究は多種多様で、持久力維持よりも結論を出しにくいものの、全体的なパターンは持久力トレーニングとほとんど同様な印象です。
- 重要になるのは強度(=いかに高負荷のトレーニングをするか)
- 強度を落とさなければ、トレーニングの頻度と時間は短縮しても問題ない
負荷さえ維持していれば、筋力と筋肉量の双方を数ヶ月は維持できるそうです。
詳細をまとめておくと、
- 運動の頻度については、いくつかの研究で「週1回のトレーニングでも筋力と筋肉の大きさを維持するには十分である」と報告されている
- トレーニング量についても同様で、「1つの動作につき1セットで十分に筋力と筋肉の大きさを維持できる」との報告が多い
- ただし60歳以上の場合、週2回のトレーニングの方が筋肉を維持でき、セット数も2セットすることを推奨している
大ざっぱに捉えると、「負荷さえ変えなければ、トレーニング量を減らしても問題ない」と言えそうです。
注意点としては、このレビューはかなりハードなトレーニングをしている人(ガチ勢やプロレベルのアスリート)を対象にしている点です。なので、健康増進やボディメイクといったレベルのトレーニーだと結論が少し異なってくる可能性はあります。
ということで、一般の方々が時間がとれないときは、高負荷でパパッと終わらせましょう。アスリートやパフォーマーなどは、なるべく日々の鍛練を大切にしていってほしいものです☆