運動による健康効果が絶大で、頭が良くなるのも、その恩恵の1つです。
…と伝えてきたのですが、どうやら運動による頭が良くなる効果は、ちょっと複雑な様子です。
「運動が脳に与える効果は、思いのほか小さい」という話があったり、「運動で頭が良くなるには条件がある!」という話があったりします。
今回は、そんな複雑な話を解説していきます。
≪Contents≫
運動をしても頭が良くならない?
これは、2023年に出た包括的レビューで、健康な男女11,266名分のデータを検討した24のメタ分析をレビューしたものとなっております。
過去のデータでは、全体的にプラスの効果を報告していたものの、それがどこまで事実かを検討したものとなっています。
この研究で判明したことを大まかにまとめていくと、
- このレビューに含まれる24のメタ分析のほとんどが、運動が認知機能にプラスの効果を報告していた。
- しかし、一次RCTにおける統計検出力の低さや研究の選択的包含、出版バイアス、および前処理と分析上の決定の組み合わせにおいて大きなバラつきがあると証明された(たとえば、身体活動レベルのベースラインやプラスの効果の強調など)。
- 上記のような問題を調整したところ、運動によって脳機能が向上するかどうかは、これまでのメタ分析で推定されたものよりも実際には小さく、なかには無視できるものである可能性も存在する。
以上の結果を基に、研究チームは、「より信頼できる科学的な根拠が蓄積されるまで、身体活動が認知健康、学業成績、実行機能を改善することを表明すべきではない 」と結論付けています。
他方で、「運動による脳機能の改善」を報告した良質なデータがあるという、確かな事実もあります。なので、このレビューをもって「運動による脳の改善が否定された」という結論にはならないのは知ってもらいたいです。
「運動で頭が良くなる!」の条件
最近のデータを基に、運動による脳機能の改善の可能性について解説していきます。
2023年のデータによると、「運動で頭が良くなるには、運動の強度が重要なのでは?」と結論を出しております。これは91,084名分のデータ(参加者の年齢は、英国バイオバンクでは 40 ~ 69 歳、COGENT コンソーシアムでは 8 ~ 96 歳)をまとめたもので、実験内容としては、手首に着けるモーションセンサーで全員の運動量を測定していったものとなっております。これで得られた情報から、身体活動の差に関連する遺伝子変異を特定したそうです。
さらに257,841名の男女を集め、今度は日々の身体活動に関する遺伝子変異が認知機能に影響を与えているかどうかを検証していきました。その結果、以前から言われていたとおり、普段の運動が脳機能に影響を与えていることがわかったそうです。
この研究でわかったことで、僕らに必要な情報をまとめると、
- 中負荷の身体活動(ex:早歩きなど)が脳に与える効果は、高負荷の身体活動(ex:ランニングなど)が脳に与える効果の1.5倍だった。
- すべての強度の身体活動(ウォーキングなど)をまとめて分析した場合、認知機能への影響は見られなくなった。
- よって、運動による脳機能の改善は、激しい運動や軽い運動をするよりも、中程度の運動を維持するほうが重要である可能性がでてきた。
この結論がどこまで正当性があるかはわかりませんが、運動で頭が良くなるのは、疲れ果てるほど追い込む必要はないのは朗報でしょうね♪
有酸素運動ではBDNFが増加する話しが有名なので、おそらくは、その関係なのかと思います。あとは、アンチエイジングなら筋トレといった高負荷の運動が良きなので、上手く使い分けるのが良いのかもしれませんね☆
【参考文献】
[An umbrella review of randomized control trials on the effects of physical exercise on cognition]
[Genetic insights into the causal relationship between physical activity and cognitive functioning]