健康志向の高い方々ですと、素材や添加物にもこだわりを持つことがあります。
たとえば、牛肉だと、グレインフェッド(穀物で育った牛)よりもグラスフェッド(牧草で育った牛)を選択するといったことをしますね。確かな事実として、過去のデータでは「グラスフェッドの牛肉は健康に良い!」ことがわかっていますし、基本的にグラスフェッドの牛肉が選べるならば、そちらを選んだほうが良いです。
では、気になる「プロテインも、グラスフェッドにこだわった方が良いの?」も、明らかしていきたいところ。今回は、そんな疑問に、お答えしていこうかと思っております♪
グラスフェッドとそうでないホエイプロテインの効果の差異
これは2023年に出たRCTで、この実験では、グラスフェッドプロテインと普通のプロテインとを比較して「運動の回復効果に違いがあるのか?」を調査してくれています。
実験の内容ですが、参加者は日常的に筋トレをする健常者39名(年齢の幅は18~40歳)で、まずは参加者全員に1RMの60%で10回10セットのスクワットをしてもらって筋肉のダメージを誘発してもらいます。その後、
- グラスフェッドプロテイン
- グレインフェッドプロテイン
- プラシーボプロテイン
に分かれて飲んでもらい、その効果の違いを1日3回ずつ、3日間連続で摂取してもらったそうです。プロテイングループは1回25gのタンパク質と2gの炭水化物を摂取し、プラセボは1回0gのタンパク質と32gの炭水化物を摂取してもらったとのこと。
その結果、以下のことがわかったそうです。
- グラスフェッドプロテインとグレインプロテインを摂取した参加者間で、運動後のダメージ回復について目立った差は確認されなかった。
- 第一、ダメージ回復が最も良好だったのはプラシーボグループで、プラシーボグループは、運動から72時間後にバーベルバースクワットのスピードが回復したのに対し、ホエイプロテイン群ではいずれもそのような改善は確認されなかった。
この実験の結論では、グラスフェッドとグレインフッドとでは、運動後の身体の回復には関係がないということのようです…。
まずですが、グラスフェッドプロテインには、
- ラクトフェリン
- リゾチーム
- β-ラクトグロブリン
といった成分が含まれていて、これらは抗酸化作用、抗炎症作用、免疫機能調整作用をもたらすとされています。グラスフェッドの牛肉では作用されるものの、今回のプロテインでの結果では、それがみられなかったようですね。参加者のデータを見ると、ほとんどの参加者がすでに高タンパク質を摂取(1日に体重1kgあたり1.6~1.8g)していたようなので、それがプロテインを追加しても効果が出にくかった可能性があったと思われます。
プラシーボグループのほうが筋肉損傷の修復がみられた理由については、これはプロテイングループよりも炭水化物を多めに摂取した影響があり、むしろ、運動後は炭水化物をしっかりと摂った方が良いという証明になってしまっている感じです。
過去のデータも合わせて言うのであれば、
- グラスフェッドが健康に良い理由の大半が脂肪分によるもので、それを除去しているプロテインを摂取しても効果があるのか?
- グラスフェッドの牛といえども、安全性の保証が確約されていない
というのがありますね。
製造工程で健康になれる脂肪がなくなってしまうので、「それって、普通のホエイプロテインと同じでは?」っていう状態になってしまいます。アミノ酸のバランスも、グラスフェッドのミルクも一般的なミルクも一緒なので、プロテインにしちゃったら理論上変わらないことになります。そして、過去のメタ分析を参照して説明しているのの、長期的なデータではないので、オーガニックなものとはいえ安全性の保証がありません。なので、グラスフェッドと言えど「抗生物質は使ってませんよ~~」というわけでもないので、いぶかしく思ってしまう次第です。
倫理的な考え方や健康志向、強いこだわりがないのであれば、ホエイプロテインについてはどちらでもよいというのが今回の結論なのでしょうなぁ☆
【参考文献】
[Grass-Fed and Non-Grass-Fed Whey Protein Consumption Do Not Attenuate Exercise-Induced Muscle Damage and Soreness in Resistance-Trained Individuals: A Randomized, Placebo-Controlled Trial]
[Nutritional quality of organic foods: a systematic review]
[Are Organic Foods Safer or Healthier Than Conventional Alternatives?]