クロノニュートリション(Chrononutrition:時間栄養学)というものをご存知でしょうか?
この分野について簡単に説明しますと、「食事のタイミングや頻度が、体調や体型にどのように影響を与えるのか?」というもの。昨今では、「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」も重視するようになり、世間では「プチ断食」が有名だったりします。
現段階では、この分野における明確な結論は出ていない様子で、
- 各データによって、「食事回数が多いと痩せやすい」と「回数が多いと太りやすい」と真逆の報告がある。
- 同様に、「食事時間が重要である」と「食事時間は関係ない」と、これもまた真逆の報告がある。
ということで、「人による」なんて身も蓋もないような感じになっております。
今回は、そんな何ともし難い「食べる時間で太るのか問題」について、科学的に追究していきますので、よろしくお願い致します!
時間栄養学における肥満と食事の関係
これは2025年に出た東京大学による大規模調査で、全国の20〜69歳の男女1,047名を対象に、時間栄養行動質問票(CNBQ)と11日間日記を用いて、平日と休日のそれぞれについて、次のようなものを評価しております。
- 食事頻度
- 間食頻度
- 総食事頻度
- 最初の食事のタイミング
- 最後の食事のタイミング
- 食事時間枠の長さ
- 食事開始点
- 食事時差(食事ジェットラグ:平日と休日の食事開始点の差)
この時間栄養行動に対し、食事の質や肥満との関係性について研究していったそうです。
この調査の精度の高さですが、「アンケート」と「食事日記」の2パターンで検証していて、記憶を頼りにするアンケートとリアルタイムによる食事日記(4日間の記録+時間記録)」の2種類を使って、食事の「タイミング」「頻度」「長さ」などの行動を調べおります。そして、人間は本能的に自分を良く見せたくなる生き物で、とくに太っている人は、食事量を少なめに申告します。これを“エネルギー摂取の過少申告”と呼んでいますが、この誤差を調整する工夫もされております。
いままでの研究よりもしっかりと調査してくれておりまして、個人的には信ぴょう性が高い内容となっております。
結果なのですが、まずは「アンケート調査では、食事のタイミングが肥満や食事の質と関係があった」とのこと。
食事の質が悪化する要素として、
- 間食の頻度が多い
- 食事の回数が多い
- 夜遅くに食べている
- 全体的に食事を開始する時間が遅い
- 平日と休日で食事時間がズレている
肥満(BMI25以上)や腹部肥満のリスクが食生活としては、「食事や間食の頻度が多い」「食事ウィンドウ(最初の食事〜最後の食事までの時間)が長い」「最初の食事が早すぎる」「休日の最後の食事が遅い」とのことで、ものすごく簡潔にまとめると、「食事の時間がとにかくバラバラで、さらに間食が多い」というところでしょう。
常に何か口にしている感じでしょうね…。
ところが、もうひとつの調査方法である「食事日記」の分析では、「調整に関わらず、時間栄養行動と食事の質、一般的な肥満、または腹部の肥満との間に関係性が見つからなかった」とのこと。食事の時間や回数、長さなどといったあらゆる要素をチェックしても、食事の質や肥満とは関係がないという結果が出たそうです。一部例外として、「平日の朝食・夕食が遅い人は食事の質が悪い」ということだけはわかったそうです。
この差について研究者たちは、次のような仮説を立てております。
- アンケートには「記憶と印象」に基づいている:アンケートでは、過去1ヶ月の平均的な食事の記憶を元に書いておりますので、自分が思い描いているセルフイメージが混在していて、それによるバイアスがかかることが多いかもしれない。
- 食事日記には「反応バイアス」に基づいている:食事日記をつけるという行為自体が、行動に影響を与える可能性がある。「日記を書く」という行動によりで健康的な食生活を送るようになり、間食をしたくても日記を意識してガマンできるようになり、普段の食生活が変化してしまう。
ということから、両者の調査方法にメリット・デメリットがあり、この差分が時間栄養学の結論を困難にしているかもしれません。
今回の研究を元に、僕らにできることは、
- 自分の食生活をチェックする:まずは、自分の食生活を把握するところから始めるのが良いでしょう。大がかりでなくてもいいので、食事管理アプリなどを使ってみるのが良いでしょう。自分がどの時間帯に、どういった理由で、なにを食べているかのパターンがわかってくるので、それを元に自身の食生活を修正していけると思います。
- 食生活を一定に保つ:平日と休日での食事時間の大きなズレが、食事の質と負の相関が出ております。なので平日でも休日でも、同じ食生活を心がけるのが良いでしょう。
- 「夜遅くの食事」はしない:とくにアンケートベースでのデータでは、最後の食事が遅いほど、食事の質が悪くなりやすい傾向がわかっております。基本的に2時間前の食事は、消化にも睡眠の質にも悪影響がでるので控えていきましょう。
時間栄養学の結論は、計測方法によって変わってくるようです。
研究分野としてはまだまだ始まったばかりなので、明確な答えを出すには時間を要する感じ。とはいっても、食事のタイミングが体内時計や代謝に影響を与えるのは確定していますので、基本に忠実な“健康的な食生活を送る”を徹底していきましょう☆