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『年収1000万円で幸福感が頭打ちになる説』を深掘りしていきます

一度は耳にしたであろう「年収1000万以上で幸福感は頭打ち・限界になる!」という説…。
この説ですが、ダニエル・カーネマン氏によって提唱されたものでして、要は「物質的な幸福には限界がある!」ようでして、それ以上稼いでも無駄なのではないか?…ということ。

『人生に大切なのはお金ではないんだ!!』みたいな印象を受ける結論で、僕にとっては「さすがにそこまで稼げば、そんな考えには至るよねぇ~~」って感じです。
ちなみに、ダニエル・カーネマン氏はファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? で有名ですね。

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今回はこの『年収1000万円で幸福感が頭打ちになる説』を深掘りしていきます。
僕個人の思想としては、この説に関してはシッカリしていきたいと思っている次第でして、その真相を突き止めたいところです。

 

 

経済力で得られる要素について

 

まずは2018年に出たアメリカ・パデュー大学の研究で、ギャロップ社が164カ国から収集した約170万名のデータを使ったものを紹介していきます。
大まかな内容ですが、対象者全員に人生の満足度や幸福度を調査し、それぞれの年収と比較していきました。これを各国の購買力で平均化し、最終的な結論を出しております。

まず、ここで得られた結論が『感情の幸福は年収60,000〜75,000ドルで限界を迎える』ということです。
この結論については、カーネマン氏とほぼ一緒の結論ですね。
これを書いている段階では1ドル=110円ですので、およそ660~825万円あたりが幸福感の限界なのでしょうね。

さらに、この論文では別の結論も出していまして、それが『人生の評価は年収95,000ドルで限界を迎える』とのこと。
これを円に直すとおよそ1045万円で、こちらも通説どおりの金額となります。

 

この「感情の幸福」と「人生の評価」についてですが、簡潔にまとめると、

 

  • 感情の幸福:喜怒哀楽などといった感情の移り変わりでして、ポジティブな感情が多いほど幸福度も高い。
  • 人生の評価:「上手に生きているか」や自分の目標へのまい進、他者よりも幸せに感じているかといった、自身の人生をポジティブに生きているかどうか。

 

という感じです。
毎日を幸せに生きるなら800万、人生に満足するなら1000万あれば十分だ!…みたいなところです。

更に言うと、この論文では他のデータも得られまして、どうやら『限界を超えた場合、むしろ幸福度や人生の評価が低下する傾向にある!』そうです。
研究者は、

年収95,000ドルを超えたあたりから、多くの人物は「自分の人生はどういった感じなのだろうか?」、「他者よりも良い人生を送っているのだろうか?」といった、自身の人生に疑問を抱き始める。

 

と推察しています。
生活のベースラインが完成すると、今度は人生の意味などに意識がシフトするのでしょうかね???

 

 

 

幸福感と経済力との関係性

 

それでは、今度は2021年のデータを見ていきます。
これはペンシルバニア大学ウォートン校のマシュー・A・キリングワース氏が発表した論文で、簡単にまとめると

 

  1. アメリカの労働者33,391名を対象に「幸福度の評価アプリ」をわたして、不規則な時間で「いま幸福だとを感じてますか?」といったような調査をする
  2. 最終的に1,725,994のデータを集めて、これを対象者全員の年収と比較していく

 

簡単な方法ではありますが、年収の振り幅がかなり大きく、データとしては十分な信頼度だと思います。
…で、肝心なデータがコチラとなります

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たて軸が幸福度の変化で、よこ軸が年収の変化を表しています。
そして、青のラインが人生の満足度で、赤のラインが瞬間的な幸福感(その場の一瞬のときに幸せと感じたか)を表しております。

結果は見てわかるとおり、年収が上がるほど満足度も幸福感もあがっていきます!
つまり『年収1000万円で幸福度は頭打ちになる説』は大嘘であるということです。僕個人の思想のとおり、お金はあればあるほど幸福になれるわけです。

 

このグラフで気をつけてほしい点はグラフのよこ軸でして、収入の増え方が対数スケールになってるところです。

対数スケールとは、一定の間隔(「1+2+3…」という感じ)で数値が増えていくのではなく、数値が倍(「2×2×2×2…」という感じ)に表記していくタイプのこと。
対数スケールを使う理由は、普通の表記ではグラフが長くなったり、普通の表記だと変化がわかりにくかったりするためで、その問題を解決する方法です。数値の変化が見えにくい場合、対数スケールで縮尺を変えてわかりやすくしているわけです。

なぜ気をつけてほしいかというと、確かに年収があがると幸福感もあがるのは確かなものの、上がり幅が微々たるものだからです。
さっきの対数スケールの話ですが、それはあくまでもグラフを見やすくするためで、詳細に表すとほとんど横ばいになります。現に幸福感の変化ですが、数値を見ると「年収がおよそ8000万円になっても標準偏差が0.4しか変わらない」という結果が出ています。

要するに「年収1000万円」と「年収1億円」の人の幸福度は、それほどかわらないということです。
この研究の肝は『年収1000万円を超えると幸福感は絶対に上がらない』ことに異議を唱えることが目的でして、年収1000万円オーバーでも幸せになり続けるけど、それほど幸せにはなれないよ!…ということです。

 

 

 

キリングワース氏はインタビューで、

経済的な裕福さでは、わずかな差の幸福しか説明できない。
人々に「お金がどれくらい重要か?」を尋ねてみると、「お金がさほど重要ではない」と回答した人物については、その人の幸福度をほとんど予測できない。

収入が多くなくとも、高い幸福感を達成することは可能である。

 

と答えています。
「お金は幸福に対して、それほど影響力が高くはないから気にする必要はない!」という、それだけは不変の結論なので固執しないように…っと☆

とはいっても、資本主義の国で生きている以上、ある程度の経済力は欲しいところ。
なにをするにもお金が必要ですから、1000万円くらいまではあっても良いかと思いますね!

 

 

【参考文献】
[Happiness, income satiation and turning points around the world]
[Experienced well-being rises with income, even above $75,000 per year]

 

 

 

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