ロールモデルは、なにか習慣づけるにはもってこいの方法です。
歴史上の人物や尊敬しているスポーツ選手、身近なところだと職場の上司や憧れの先輩などが候補ですね。
参考になる対象を思い描くことで、習慣や仕事効率、目標達成が容易になるので、ロールモデルはオススメの方法の1つとなっております。
では、ロールモデルの対象として「才能型の人と努力型の人、どちらがロールモデルとして優秀なのか?」が気になるところ。「天才を参考にしたって意味がないのでは?」なんて声もありそうなので、科学的にはどうなのかを解説していきます。
どうぞよしなに…。
「アインシュタインとエジソン」2人のロールモデルによる比較
これは2020年に出たペン州立大学などによる研究でして、3つの実験をとおして「モチベーションが高まりやすいロールモデル」について調べております。
具体的には、まず1つめの実験では176名の男女を集めて、チームが用意した科学者の伝記を読むように指示していったようです。その内容が「ある科学者は、キャリアのあいだに複数の困難や失敗に見舞われましたが、どうにか努力を重ねて成功しました。」という、誰にでも当てはまるようなものです。
ですが、研究チームは被験者を2グループにわけまして、
- 「さきほどの伝記は『アインシュタイン』の話です」と伝える
- 「さきほどの伝記は『エジソン』の話です」と伝える
と、同じ伝記でも違う人物の人生だと伝えていったようです。
この2人を選抜したかと言うと、一般的にアインシュタインは「才能の人」だと言われていて、エジソンは「努力の人」だと言われているからです。この実験の要は、生まれながらの天才と、何千何万の失敗を積み重ねて発明をした努力家のどちらがモチベーション向上につながるのかを調査したというところです。
すべての被験者には「自分の才能についてどう思っているのか?」というアンケートに答えてもらっていまして、
- 優秀な科学者になれるのは天才だけだ
- 科学に向いていない人も存在する
- 知性は生まれつき決まり、後天的には変えられない
などといった質問に、どれだけ賛同できるかを評価していきます。
さらに、数学の問題をいくつか解いてもらい、被験者全員がどのような解決のアプローチ方法を選択したかもチェックしていったそうです。
実験の結果ですが、以下のような傾向が見られたそうです。
- 「エジソンの伝記」だと伝えられたグループは、「成功には特別な才能は必要ない」や「知性は後天的に変えられる」と思う傾向にあった
- その影響により、「エジソンの伝記」だと伝えられたグループは、数学の問題でも良い成績を出す傾向があった(約23%増)
どうやらエジソンのような努力型のロールモデルは、成長マインドセット(自分は変えられる!…といったもの)になり、モチベーションが高まりやすいそうです。
2つめの実験では162名の被験者を用意して、
- 「アインシュタインの伝記を読んでもらいます」と伝える
- 「マーク・ジョンソン(架空の人物)の伝記を読んでもらいます」と伝える
というように、1つめの実験と同様に伝記を読むように指示していったそうです。
すると、こちらの結果も1つめと同様、架空の科学者の伝記を読んだグループほど成長マインドセットとなり、数学テストの成績が向上したようです。つまり、「有名な天才科学者」よりも「努力の無名科学者」の方がロールモデルとしては優秀かもしれません。
3つめの実験は、前述の2つの実験を補完するような内容で、288名の被験者に
- アインシュタイン
- エジソン
- マーク・ジョンソン
では、どちらがロールモデルとしてもっとも優秀かを調査していきました。
その結果、「エジソンが一番モチベーションが向上した!」ということとなったそうです。
「有名な努力家>無名の努力家>生まれつきの天才」という感じで、結局は皆が良く知っている努力型の人をロールモデルにした方がモチベーションが上がるみたいですね!
研究者によると『今回の結果を統括すると、「あの偉人が成功したのは努力のおかげだ!」と思い込んだ場合は、天才の成功談を聞くよりも動機づけられるようだ。』という感じみたいです。
個人的な感想として、アインシュタインのような超絶天才の話を聞いても「ふ~ん、そうなんだ…」や「あの人は天才だし、俺には関係ないや」になっちゃいますからね。
やっぱり、努力していった末につかんだ栄光を聞くと「よし、俺も頑張ろう!」ってなっちゃうのが人間なのかと…。
とはいえ、アインシュタインのような「天才なのにお茶目でひょうきんな人」という側面は、ロールモデルにするのは良いのかと思います☆
【参考文献】
[Not All Scientists Are Equal: Role Aspirants Influence Role Modeling Outcomes in STEM]