「一部の人は、人工甘味料によって腸内環境を破壊される!」という話がありまして、個人的には敬遠している所存です。
一応ですが、アメリカ食品医薬品局が様々なデータを精査し、「人工甘味料は安全だろう」 という結論は出しています。けれども、僕的に気になってしまうところがあったもので、人工甘味料が実際に健康にとって良いものなのかを調べていこうかと思っています。
皆さんも、どうぞ参考にしていってください。
≪Contents≫
腸内環境が破壊されグルコース不耐症になる
2014年にネイチャーで掲載された論文では、ヒトとマウスによる様々な検証をしてくれています。
■ヒトに人工甘味料を摂取させた場合
普段は人工甘味料をまったく飲まない7名の健康な男女を対象に実験がおこなわれ、1週間だけサッカリンを飲み続けてもらいました。実験に使われた用量は体重1kgあたり5mgでして、これはアメリカ食品医薬品局が認めた「安全ライン」に収まった内容となっております。
結果ですが、
- 7名中4名がグルコース不耐症のレベルが上昇し、腸内細菌も悪化していた
- しかし、残りの3名にはまったく悪影響がなく、腸内細菌も安定していた
過去のデータでも「人工甘味料によって体調が変化する人と、そうでない人がいる」と、複数の報告があります。
このことから、改めて同様の結果が得られたことになります。
■マウスに人工甘味料を摂取させた場合
生後10週間のマウスたちに、ブドウ糖もしくは人工甘味料(スクロース、サッカリン、アスパルテーム)を摂取させた実験があります。11週間ほど摂取させ続けたあとでテストをしたところ、人工甘味料を摂取したマウスほどグルコース不耐症のレベルが上昇したようです。
グルコース不耐症とは、簡単に言うと、上手に糖質を処理できない状態を意味しています。
これが続けば、肥満や糖尿病につながっていき、特にサッカリンが悪影響が大きかったそうです。
■ヒトの便をマウスに移植した場合
この論文では、上記のヒトの便を無菌マウスに移植した実験もおこなわれております。
無菌マウスとは、生まれた直後から無菌室で育てられたマウスでして、腸内細菌がまったく存在していません。なので、細菌の影響を調査するときなどに、よく使用されています。
結果ですが、
- 人工甘味料で腸内細菌に悪影響が出たヒトの便を移植したマウスは、同様にグルコース不耐症が悪化した
- 人工甘味料で悪影響がなかったヒトの便を移植したマウスは、何の変化も起きなかった
これを見る限り、やはり人工甘味料が腸内細菌にダメージを与え、最終的にはエネルギー代謝の異常にまで発展していくんでしょうね…。
人工甘味料にメリットがあるのか
人によっては、腸内環境に悪影響が出るものの、メリットが存在するのかも気になるところ。フライブルク大学などによる2019年のメタ分析では、過去の人工甘味料のデータをまとめてくれています。
この分析の対象になったデータは、観察研究が35件でRCTが21件です。
どのような内容を調査してくれたかというと、人工甘味料をとることで、以下のことにメリットが現れるかをチェックしてくれています。
- 体重減少
- 歯の健康の維持
- 糖尿病改善
- 甘味への中毒症状
- 発ガン性
- 心疾患リスク
- アレルギーへの影響
- 気分による脳の機能
etc.
結果を簡潔に羅列していきますと、
- 人工甘味料を摂取しても平均的な体重の人には影響しない。ただし、肥満の人は平均1.99kgほどダイエットに有効である可能性がある
- 2件のRCTでは、人工甘味料をとる人はBMI が0.6ユニットほど低い傾向があったものの、明確な内容ではない
- 52名のサンプルを対象にした研究では、人工甘味料で空腹時血糖値が改善する可能性が確認された(0.16mmol/L)
この結果に研究チームは、
一般的な人が人工甘味料を摂取しても、明確な恩恵は得られないようだ。
肥満には良い影響がある可能性があるものの、それには、より質の高い研究が要求される。
ということで、これまでのデータでは全体的にデザインが良いとは言えず、明確な結論を出すために追究していく必要がありそうです。ひとまず、肥満に分類される人のダイエットには有効でしょうけど、それ以外の人には必要のないものでしょうね~~。。。
【参考文献】
[Generally Recognized as Safe (GRAS)]
[Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota]
[Association between intake of non-sugar sweeteners and health outcomes: systematic review and meta-analyses of randomised and non-randomised controlled trials and observational studies]