昔は、よく「卵は、1日に1個だけっ!」なんて怒られたものです。
よくある理由は、「たくさん食べるとコレステロール値が高くなって、心血管疾患リスクが上がるよー」というもの。しかし、2014年の系統的レビューでは「動物や卵の脂肪は心疾患との関係がなく、むしろ、魚の脂肪は心疾患のリスクが下がる!」という結論を出しています。そういうこともあり、基本的に食品から摂取するコレステロールは、そこまで心配しなくてもよく、現在では、1日1個なら気にしなくても良いという雰囲気を出しています。
とはいっても、栄養豊富な食材である卵は、やっぱりたくさん食べたいものです。なので、今回は、「卵は、どれくらい食べても大丈夫なの!?」について深掘りしていきます!
「卵は1日何個までなら大丈夫なの問題」の結論
2024年に出た、アメリカ心臓病学会の研究では、「週に12個の卵を食べても問題ないだろう…」という結論を出しております。この研究は査読論文ではなく、規模もかなり小さい研究なので、これから話す研究の内容は、参考程度に留めておいてください。
研究の内容を大まかにまとめますと、心血管疾患患者とその予備軍140名(全員が50歳以上で平均年齢66歳、うち約半数が女性)を4ヶ月かけて追跡していった結果、「週に12個の卵を摂取している人のコレステロール値は、週に2個以下の卵しか摂取していない人と同レベルである」ということがわかったそうな。これは、高血圧、高コレステロール、肥満、糖尿病などの高齢者でも、卵は問題を起こさないことを意味し、なんなら健康的な人なら、ほとんど気にする必要のない食べ物であると言えます。
ちなみに、このときに使われた卵は強化卵だったとのことで、ビタミンD、セレン、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB12、オメガ3脂肪酸などを追加した卵のことです。
詳しく見ていくと…、
- 血中コレステロール値は、強化卵を定期的に摂取している人、卵をほとんど摂取しない人、卵を全く摂取しない人の間で同程度だった。
- 強化卵を摂取しているグループは、総コレステロール値、インスリン抵抗性スコア、高感度トロポニン(心臓障害のマーカー)が減少し、ビタミンBのレベルも上昇した。
- 特に、高齢者や糖尿病患者が強化卵を摂取すると、HDL(善玉)コレステロールの増加やLDL(悪玉)コレステロールの減少などの恩恵を得られる可能性があった。
とのこと。
あくまで強化卵を用いた実験であり、通常の卵でも同じ結果になるかは不明です。また、HDLコレステロールの増加やLDLコレステロールが減少が見られたからといって、心疾患患者や糖尿病患者こそ卵を摂取すべきであるというわけではありませんので悪しからず…。
更に追究していくと、冒頭で書いたとおり、この結論は参考程度に留めておいてほしい理由を説明していきます。
このことについては、いままでのメタ分析でも結論がバラけており、
- 1日1個の卵を摂取しても心臓や血管の病気リスクは増加せず、特にアジア人の集団ではリスクが減少する可能性もある(2020年)。
- 卵を1日1個摂取すると、心血管疾患のリスクが有意に上昇する可能性がある(2022年)。
いずれも信ぴょう性の高いメタ分析であっても、その結論が二極化しております。
よって、現段階での「卵は1日何個までなら大丈夫なの問題」は、誰も明言できない状態にあるのです。
ここからは考察の領域に入るのですが、ここまでデータがバラけてしまう原因を見ていくと、
- 精度の高い実験が少なく、観察データに依存したものが多いため、データが正確ではない。
- アジアの玉子料理は健康的な料理法で食べることが多く、アジア人にとって良い結果が出た可能性がある。
- 欧米の食文化では、ベーコンやソーセージなどと組み合わせた玉子料理が多く、塩分過多や加工肉による悪影響が出た可能性がある。
がある気がします。
今のところ、特に健康的な人なら、1日2個なら問題がないと思われますね。後は、心血管疾患や糖尿病などの人は、医師との相談のうえ、自身の身体で試していくしかないと思います☆
【参考文献】
[Association of Dietary, Circulating, and Supplement Fatty Acids With Coronary Risk: A Systematic Review and Meta-analysis]
[Eggs may not be bad for your heart after all]
[Egg consumption and risk of cardiovascular disease: three large prospective US cohort studies, systematic review, and updated meta-analysis]
[Associations of Dietary Cholesterol, Serum Cholesterol, and Egg Consumption With Overall and Cause-Specific Mortality: Systematic Review and Updated Meta-Analysis]