「怒りの感情」は、ときに役立つことがありますが、基本的に穏便に過ごしていきたいものです。
アンガーマネジメントという言葉が流行りだしたとき、「怒りの感情が湧いてきても、6秒間こらえることで、怒りが鎮みますよ~」なんていう方法がありましたが、実際のところ、どうなんでしょうね。その他、有効な方法があるのなら、その方法も知りたいところ。
今回は、現段階で、もっとも有効なアンガーマネジメントについて解説します♪
覚醒を増大 or 減少させる活動の総評
これは2024年に出た、オハイオ州立大学などによる最近のメタ分析で、10,189名の参加者を含む154の研究をまとめたものとなっております。
ここでの調査は、「覚醒を増大させる・減少させる活動は、怒りや攻撃の感情にどんな影響があるのか?」というところにあります。この調査での「覚醒」とは、人体の身体がどれだけ活性化しているかを示す指標としていて、心拍数や血圧、呼吸数、汗腺の活動などが上がると、「覚醒が高い状態」にあるとしています。
この研究で「覚醒」に焦点を当てた理由ですが、前提として、「怒り」を含むすべての感情は、「生理的な覚醒」と「認知的な解釈」の2つから構成されるとのことです。まず、「怒り」については、「怒りは、現実または想像上の脅威や挑発に対する感情的な反応である」とし、最小限の怒りから激しい怒りや憤怒まで連続的に変化するとしています。そして、「生理的な覚醒」と「認知的な解釈」について説明しますと、
- 生理的な覚醒:とある不快な状況に陥って、交感神経の興奮、筋肉の緊張の増加、アドレナリンの放出などが起きる
- 認知的な解釈:その不快な状況に怒りを抱く解釈をする
という感じになります。例えば、渋滞という不快な状況に、「渋滞が起きたのは、先頭のドライバーの運転が下手だからだ!」という解釈をすることで、怒りへとつながるというわけです。この1つの状況に、身体的反応(生理的な覚醒)と、心理的評価(認知的な解釈)の2つが重なることで、怒りの発生に大きく関与するわけですね。
実のところ、過去のデータによって、「認知的な解釈」については解決方法が判明していて、それは「認知行動療法」が有効であることがわかっております。「認知行動療法」は、心理面において万能的な方法で、アンガーマネジメントにも有効なんですよね。他方、「生理的な覚醒」の調査はデータが乏しく、身体的反応に対してどのようにアプローチしていけば、「怒り」が鎮まるかが判明していませんですした。
なので、今回のメタ分析では、身体的反応に焦点を当てたということなのです。
今回のメタ分析で得られた結論ですが、以下のとおりとなっております。
- 覚醒レベルを上げる活動は、どのようなものでも怒りと攻撃性を増大させる。例えば、枕に向かって叫ぶ、パンチングバッグを叩いたり、ジョギング、サイクリング、水泳などは、怒りを増大させるだけである。
- 反対に、覚醒レベルを下げる活動は、どのようなものでも怒りと攻撃性を減少させる。例えば、深呼吸、マインドフルネス、瞑想、ヨガ、漸進的筋弛緩法などがそれに該当する。
- 上記の傾向は、どのような人物にも該当した。例えば、、学生、社会人、犯罪者、男女、人種、年齢、国などに関わらず、覚醒度と怒りの関係が確認された。
以上のことから、スポーツなどによるアクティブなストレス解消法は有効ではなく、怒りの感情が湧いてきたら、「とにもかくにも身体の覚醒度を下げるのが正解!」だということです。「運動でストレス発散だ!」なんて良く聞く話ですが、「身体を興奮させるからダメ!」と言われたら、「まあ、そうだよな…」ということです。
研究チームによると、
ジョギングはストレス解消法として人気ではあるものの、我々が調査した結果では、むしろ怒りを増大させる作用があった。
ジョギングの反復的な性質が、単調さやフラストレーションの感情を誘発し、怒りを和らげるどころか悪化させることがあるようだ。反対に、球技のように集団で行うスポーツに参加した場合、被験者の怒りは減少した。おそらく、これらは集団活動によって遊び心が刺激され、ポジティブな感情を呼び起こすからだろう。また、それと同時に、怒りを露わにした場合も、その後で怒りや攻撃性は増大した。この研究は、「怒りは吐き出すべきだ」「怒りは発散すべきだ」といった俗説を払拭するのに役立つかもしれない。怒りを鎮静化させるには、覚醒レベルを低下させる活動に重きを置いた方が良い。
覚醒度を高めるような活動にはおおむね効果がなく、なかでもジョギングなどといった単調な運動ほど、怒りが増大しやすいらしいようです。その一方、みんなで楽しめるようなものであれば、運動でも「怒り」を鎮める働きがあるみたいです。身体活動でストレス発散したいならば、遊び心を加えることで、少なくともポジティブな感情が増大して、ネガティブな感情を中和できるかもしれません。
ちなみに、今回のメタ分析で怒りを抑える効果が高いと結論づけられたのは、
- 深呼吸
- リラクゼーション
- マインドフルネス瞑想
- スローフローヨガ
- 漸進的筋弛緩法
- 横隔膜呼吸
etc.
なんだそうな。
おおよそ見当がつきそうな内容で、割とメジャーなものが、ストレス発散法なんでしょうね。
これを聞いて、やっぱり不快感というものは誰しもがわいてくるもので、それに対してどのように向き合っていくかが大切なんだなぁ~~…っと実感しましたな☆