すっかり生活の一部になっているAI機能。
けっこう便利なものでして、僕も、色々な相談に乗ってもらっていて助かっております。当然ながら、自身の地力あったうえで利用するのが一番ですから、1から10まで頼り切ってしまうのはよろしくはありませんよね。AIから得られた情報の精査をする必要もありますから。
…で、今回は、どうやら人間は、AIに頼りすぎるとせっかちになってしまうという話をしていきます。なんでもかんでもAIにおんぶにだっこは、よろしくないでしょうなぁ…。
AIの多用による時間感覚の変化
これは2025年に出た実験で、AIの利用による消費者の意志決定について研究したものとなっております。
内容としましては、まず参加者に、旅行の相談をしてもらいます。その際、参加者には2グループにわかれてもらい、人間のアドバイザー、AIチャットボットにそれぞれ相談してもらいます。そのうえで、どちらのグループも、「20秒待つ」という条件をつけていきます。その後、「今すぐ30ドルもらう」か「4週間後に35ドルもらう」という質問をし、どちらかを選ばせ、どういった回答をする傾向にあったかを評価していくというもの。
要は、人間が持っている“時間割引率”をチェックする実験です。時間割引とは、「人間は未来の価値を過小評価する習性がある」という考え方でして、
- 今すぐ30ドルもらう
- 1ヶ月後に35ドルもらう
では、いますぐお金が必要な状況以外では、合理的に考えて後者の方が恩恵が大きいハズです。ですが、その習性故に、大抵の人物は前者を選択する傾向にあります。この現象が起きる考察としましては、「人間は“待つこと”そのものに大きなストレスを感じてしまうから」という至極単純な理由によるものだとされております。
今回の研究では、この時間割引率の心理にAIがどのように影響を与えるかを調査したものでして、結果は、
- AIに相談した人は、「今すぐ30ドルをもらう」を選択する傾向にあった
- AIに相談した人は、「4週間を長く感じた」と報告した
というもの。
どうやら、AIを使用することで未来がより遠い感覚になり、その悪影響で目先の利益を選んでしまう現象が発生したそうです。このような現象が起きた原因についての考察ですが、そこには「内部時計」という概念があるそうです。このことについて大まかに解説しますと、「リラックスしているほど時間が早く感じ、緊張しているほど時間が長く感じる」という、皆さんも経験したことがあるであろうものです。
AIは一般的に「速くて効率的で、すぐに回答をくれる」というイメージが強く、このイメージが脳に影響して内部時計が加速してしまい、待ち時間が長く感じるという現象が起きるかもしれない、とのことです。
ちなみに、「AIを使うことで、忍耐力がなくなるのでは?」と思ってしまうのですが、実のところ、
参加者に「このAIは深く分析するタイプです」と説明した場合、時間が長くなる感覚が消失した。
という報告があります。
結局のところ、人間が感じているのは「実際の回答速度」ではなく、「AIは、ものすごく早くて効率的で便利なんだろうなぁ…」という先入観だったのです。この研究では、現実のシーンでも同じ現象が起きるのかを調査しておりまして、「ローンやサブスクでも同様の現象が起きるのでは?」と指摘しておられます。たとえば、ローン選択のデータを調査したところ、アルゴリズム経由で判断したほうが返済期間が長く感じ、短期ローン(毎月の支払が高くなる)を選択しやすくなったそうです。
AIはとても便利なツールで上手に活用していった方が良いけれども、AIが意志決定の質を上げてくれるわけではなく、むしろバイアスをかけてしまうことを注意しておいた方が良いですね。こういったことを理解しているかどうかで、長期的なメリット・デメリットが変化する可能性があります。
しかし、AIによって意思決定の質が変わってしまうのは不思議なものです☆
【参考文献】
[Time is shrinking in the eye of AI: AI agents influence intertemporal choice]