東洋医学の基本概念の1つに『気血水論』というものがあります。
前々回は『気』についてのお話、前回は『血』についてお話をしていきました。
なので、今回は『水』にお話をしていきます!
過去の東洋医学については
を読んでいただけるとよろしいかと…。
東洋医学独特の概念は、現代医学と合致している部分もあったりします(歴史的には、東洋医学の方が深いんですけど笑)。
ここでいう『水』は、現代医学とはちょっと異なるものです。なので、「東洋医学では、そんな感じなんだ~~!」というフラットな気持ちでお読みしていただくと頭にスッと入るかと思います。
科学がすべてではないとは思っていますし、東洋医学の中で科学的根拠がでてきているものを順次お伝えしていきます。どうぞ楽しみにしてください<m(__)m>
≪Contents≫
全身を巡り、うるおいを与える物質
『気・血・水』の『水(津液:しんえき)』は、『血』以外の体内の活性のある正常な水分や体液で、リンパ液、涙、唾液、鼻水、汗や尿などもこれに含まれています。
『水』は飲食物から得られる水穀の精微(栄養分)から『気・血』が作られる際に生成されたもので、現代医学でいう血液の重要な成分でもあります。
なので、ケガなので出血してしまうと、『血』と一緒に『水』も不足してしまいます。
『水』は東洋医学でいう脾・肺・三焦の働きによって全身を巡ります。
身体の表面を巡った『水』や、体内の臓腑を巡った『水』は、最終的に腎に運ばれ、再利用するものと不要なものに分かれます。不要な『水』は膀胱に運ばれ、尿として体外に出します。
これら水分代謝に関わるすべての作用は、東洋医学では腎が司っています。
『水』の働き
東洋医学には『陰陽論』というものがあり、『気』が『陽』であるのに対し、『水』は『血』と同様の『陰』に分類されます。
『水』の働きには、次のことがあります。
- 臓腑や各器官を循環して、うるおす。
- 関節をなめらかに動かす、皮膚にうるおいを与える。
- 汗、鼻水、涙、唾液などを作りだす。
- 脳や脊髄をうるおす。
『水』に関わる臓器
『水』の生成に関わる臓器には、次のようなものがあります。
- 脾:水穀の精微に含まれている水分を分離し、『水』として肺や腎に運ぶ。
- 肺:『水』を全身に送って体表に到達させ、発汗を調整する。余分な水分を腎・膀胱に送る
- 腎:水分代謝のすべてを司っている。全身の水分調節や腎に運ばれた『水』の排泄・再利用をおこなう。
- 膀胱:腎から送られた不要な水分(尿)を集め、体外に排泄する。
ここで出てくる臓器は、いわゆる“西洋医学(現代医学)”とはニュアンスが異なるものです。
似た作用を持っているということはありますが、西洋医学のような解剖学的具体的臓器ではないので、基本的には別物として認識してください。
『水』の変調
東洋医学の『水(津液)』は、皮膚や関節、内臓などの身体の各部分に水分と栄養分を与えます。
身体中のうるおいを与えるので、『水』の状態によって、僕たちの身体の状態が大いに変わってくるのです。
身体の不調が慢性化して『水』に影響が及ぶと、活性が失って正常な働きができなくなります。
そのため、乾燥したり、逆に水分が多すぎてむくむという症状が現れます。
『水』の変調は、『血』と同じで特に女性は注意が必要です。
『水』の不調は身体の冷えによっても起きやすくなります。冷たい飲食や運動不足、エアコンの影響などで、『水毒(すいどく):水分代謝がうまくいかない』や『水滞(すいたい):水分・体液が身体の一部に滞る』が発生して、体調不良に陥りやすくなります。
また、男女ともに、現代人は1日の水分摂取量が不足しています。
自分に必要な水分量の特定するには、以下のように求めていきます。
- 現在の体重(ポンド)を測定する。
- 体重に2/3または67%を掛け合わせ、1日に必要な水の量(オンス)を導きだす。
1kg=2.2ポンド
1オンス=29.6ml
60kgの場合でしたら、1日に必要な水分量は、
60×2.2×0.67×29.6=2617.824ml
といった具合です。
簡単な数式で計算するなら『2.2 ×0.67 × 29.6 = 43.6ml』なので、自分の体重に43.6を掛けると1日に必要な水分量が導き出せます。もちろん水だけではなく、食べ物から摂取する水分も含んでいますが、それでも意識して水分を摂取する必要があります。
『水』に関する変調には次のようなものがあり、各々によって症状が異なります。
津液不足(しんえきぶそく)
身体の『津液』が不足している状態です。
飲食の不摂生や摂取不足、嘔吐、下痢、長期の病気、発汗過多などが原因で引き起こされます。
【主な症状】
- 肌の乾燥
- かゆみ
- 乾燥性湿疹
- 尿量の減少
- 髪のパサつき
- 目のくぼみや乾燥
- 声がれ
- 便秘
- 口や唇の渇き
湿(しつ)
身体の表面や腸内に湿気を含んだガス状のものがたまっている状態です。
飲食の不摂生、水分の摂り過ぎ、湿度の高い環境などが原因で引き起こされます。
【主な症状】
- 筋、関節痛
- 残尿感
- しぶり腹(便意をもよおしても排便がない、出ても少量を頻繁にくりかえす)
- 腹部膨満感
- 食欲不振
- 冷たい汗
- 手足の倦怠感
- じゅくじゅくした湿疹
水滞(すいたい)
体内に余分な水分がたまっている状態です。
体質的に水分代謝が良くないこと、冷え、腎の不調、水分の摂り過ぎなどが原因の場合で引き起こされます。
【主な症状】
- だるさ
- 頭が重い
- めまい
- 動悸
- 吐き気
- むくみ
- 胃内停水(胃の中に水分が残ってポチャポチャしている状態)
- 冷え
- 尿が出にくい
- 下痢
- 腰痛
『水』を良好に保つ方法
『気』『血』『水』のバランスによって、身体は成り立っております。
病気になってしまうときは、この3つのバランスが崩れて循環が滞ったり、不足したりして、内臓などがうまく機能しなくなることでおこります。
この3つは、どれかが単独で変調を起こすというよりかは、複合して起こることが多くあります。
基本的には、以下の3つをおこなうと良いでしょう。
- 空気を清潔に保つ
- 多食・偏食せずに食事をする
- 水分補給を意識しておこなう
このことは『気』『血』のブログでもお話をしましたが、それだけ単純で重要なことなのです…。
現代社会を生き抜くためにも、自己管理や鍼灸施術をとおして、心身の状態を万全にしておくことが大切です。
特に『水』を良好に保つ方法は、以下のようなことがあります。
- 無理をせずに、自分のペースで生活する
- 栄養のある食事、体質に合わせて利尿作用のある食べ物や水分の多い食べ物を摂取する。
- 日ごろから適度な運動をおこない、発汗したり体液の循環を良くしたりする
- 体を冷やさない(特に足首を冷やさないようにする)。
- 塩からいものを摂取しすぎない。
『水』は、僕らの体にうるおいを与え、身体全体を良好に保つ物質です。
『水』を満ちあふれさせることで、僕らは身体がみずみずしくなります。
ですが、現代人は、生活習慣の乱れや不摂生などによって『水』が不足したり、上手く巡っていなかったりします。
単純なことではありますが、『水』のためにも『水分補給をする』ことです。
むくみで悩んでいる人もいますが、基本的に現代人は水分不足です。まずは、自分に必要な水分量を把握して、積極的に水分補給をしましょう。
むくみが気になる方でも、上手く体内の水分が循環をさせるために水分補給をしてきましょう。そのうえで、利尿作用のある食べ物や運動をしていくことが大切です。
もし自身で水分を整えることが難しい・助力が必要でしたら、どうぞ僕の鍼灸施術をご活用ください☆