世間的に見て、イチロー氏は野球で大成功を収めた方。
彼は幼少期から野球に打ち込んできましたが、一方で幼少期は「神経系の発達や様々な経験を積ませた方が良い」という考え方があり、その理論だと「幼少期は様々なスポーツを経験して中学・高校で1つに絞る」という選択になります。様々な経験を積んで1つに絞るケースについては、マイケル・ジョーダン氏が例に上がりますね。
「幼少期から1つに集中する」か「幼少期は複数経験して1つに絞る」かで迷いますが、今回は系統的レビューによって判明した「どちらが成果を上げられるのか?」を紹介していきます。このブログを参考に、進路を決めていくと良いかと思います。
系統的レビューによる「トップアスリートになるための進路」について
2021年に出た系統的レビューでは、15ヶ国の6,000名以上のアスリートが対象になった51件の研究結果をまとめてくれています。
そのうち43%のアスリートが個人スポーツでして、57%のアスリートがチームスポーツとなっております。さらに、国際大会でメダルを獲得した400名以上のアスリートも対象にしていていて、彼らがどのような経路をたどった後、トップアスリートになったのかをチェックしてくれています。
これによって得られた大きな結論が、以下のとおりとなっております。
- 世界トップレベルのジュニア選手(10代)の多くは、シニア選手になった後では成功しにくい傾向がある
- 世界トップレベルのシニア選手の多くは、ジュニア時代ではトップレベルではなかった
- ジュニア時代で大成功するなら、アスリートは幼少期から特定のスポーツに集中し、その練習に多くの時間を費やしたほうが良いかもしれない
- 反対に、世界トップレベルのシニアアスリートは、メインのスポーツを始めるのが遅く、その練習に費やす時間が少なく、重大な転機に到達するのも遅い傾向があった
つまり、基本的に、イチロー氏のような「幼少期の頃から特定のスポーツに1点集中して、成人後に大成功するケース」というものは、ほとんど存在しないということです。
大体において、世界トップレベルの成人アスリートの多くは、青年期に特定のスポーツに焦点を当て、そのうえで世界トップレベルの大成功を収めることが多いようです。これらの傾向は水泳やランニングといった測定可能なスポーツだけでなく、野球やサッカーなどのチームスポーツ、フェンシングやレスリングなどの格闘技、ダイビングや体操などの芸術系スポーツなど、あらゆるスポーツに見受けられたそうです。
残念ながら、このレビューでは「世界トップレベルアスリートほど幼少期は様々なスポーツを経験している理由」については追究できておりません。
ですが、研究チームは以下のような仮説を立ててくれております。
- 幼少期に複数のスポーツに参加することで、特定のケガが避けられる、心理的な燃え尽きの可能性が低くなる
- 複数のスポーツを経験することで、幼少期に自身の才能をよりよく見極められる可能性がある
- 多種多様な経験を積むことで、アスリートとしての基礎ができる可能性がある
この系統的レビューではスポーツのみが対象となっていますが、先行研究によれば学術分野にも同じような現象が起きている様子。
ここではドイツの研究者であるアニータ・グラフ氏の研究が取り上げられていまして、
- 1945年以降の物理学、化学、経済、医学の分野でノーベル賞を受賞したドイツ人48名のデータを集計する
- 対象者全員の経歴を調査して、どのような共通点がみられるかをチェックする
48名のノーベル賞受賞者のうち42名が過去に複数の分野を学ぶ、受賞した分野以外の分野でも仕事をしているといった経験を積んでいたようです。それと同時に、ライプニッツ賞(ドイツの最高科学賞)の受賞者と比較したところ、ノーベル賞受賞者たちは正教授の地位や受賞までの期間が長く、若くして奨学金を受ける可能性も低かったとのこと。
「何事も、小さいころから経験していった方が良い」とは言いますが、それが科学的に証明された感じですね!
幼少期からいろんな経験をすることは、大きな実がなるまでの時間がかかることでしょう。
ですが、それまでの積み重ねてきた結果は、大人になってから役に立つときが来る可能性があります。なので、「世界トップレベルの大成功をつかみたい!!」と願っているなら、時間をかけてでもいろいろな経験をする方が良いですね。
確かに、いろいろな経験をした人間って、深みがあって魅力がありますからね☆