人間は年齢を重ねるごとに、タンパク質を食べたあとの筋タンパク質合成が起こりにくくなります。
そのため、若いころよりも積極的にタンパク質を摂取する必要があり、この現象は「アナボリック・レジスタンス」と呼ばれています。簡潔に説明しますと、若いころと同量のタンパク質を摂取しても、筋肉が反応しにくくなる状態を意味しております。僕も40歳なので、タンパク質の摂取には、十分に意識している次第です。
そういったこともあり、今回は「加齢によるタンパク質の吸収率低下に、どう立ち向かえばいいのか!?」っていうところを調べましたので、ご紹介していきます!!
若者と高齢者のタンパク質の消化率の差異
まずは、「なぜ高齢者は、タンパク質への反応が悪くなるのか?」についての仮説から入ります。
これまでは、
- 筋肉の合成シグナルが弱くなる
- 筋肉への血流が落ちる
- アミノ酸が内臓に多く取り込まれる
- 運動量が減少する
etc.
などといった理由が考えられてきました。
ただ、ここで気になる点が、「そもそも高齢者は、摂取したタンパク質をうまく消化・吸収できていないのではないのか?」ということ。加齢により、歯や噛む力が衰えがおきる、胃から腸へ食べ物を効率よく送ることができない、膵臓が作る消化酵素が減少する、などといった可能性があります。そういうこともあり、摂取したタンパク質が若いころと同等にアミノ酸が吸収されなくなってしまう可能性が高いとしています。
そういったことで、2026年に出た研究では、若者と高齢者とで、タンパク質の消化率がどれぐらい差があるのかを調査してくれていますので、それを見ていきましょう。
実験内容ですが、若者10名(21.8 ± 1.7歳)と高齢者10名(72.8 ± 3.8歳)を招集し、参加者は別々の日に、
- 牛乳
- ソルガム(アフリカやアジアでよく食べられているイネ科の穀物)
- 黒豆
という3種類の食品から、それぞれ20gのタンパク質を摂取してもらったとのこと。つまり、この実験では、動物性タンパク質、穀物、豆類でのタンパク質摂取の吸収効率の差を比較していったわけです。さらに、摂取後8時間にわたって血液をチェックし、必須アミノ酸のうち、特にリジンとスレオニンがどれぐらい消化・吸収されたかを測定。タンパク質を摂取したあとで、どれぐらい血液中にアミノ酸が現れたかを追跡していったそうです。
結果なのですが、
- ソルガムでは、高齢者のリジンとスレオニンの消化指標が、若者より19%低かった
- その一方で、牛乳と黒豆では、若者と高齢者のあいだに統計的有意差は確認されなかった。
つまり、加齢によってあらゆるタンパク質の消化率が一律に低下するわけではなく、加齢の影響はタンパク源によって異なるかもしれないということです。
注目したいところは、同じ植物性タンパク質でも、ソルガムでは年齢差が現れたのに、黒豆では現れなかった点です。今回の結果を見る限りでは、「動物性なら吸収効率が良く、植物性は効率が悪い」といった大まかな分類だけでは、この事実を上手に説明できません。これには、食べ物の構造や加工法、食物繊維、抗栄養素などの違いも関係している可能性があります。
ひとまずですが、高齢者はタンパク質の消化率が落ちる可能性自体は、存在しております。
今回紹介した実験を参考に、どうやって加齢によるタンパク質摂取問題に立ち向かうかといいますと、
- 1日のタンパク質総摂取量は確保する:一般的に、体重1kgあたり1.0~1.2g程度のタンパク質が、ひとつの目安としております。ただし、運動をしている人や減量中の人、病気や入院などで筋肉が減りやすい人については、体重1kgあたり1.2~1.6gと、少し多めに摂取することが大切です。65歳以上を対象にしたメタ分析でも、1日1.2~1.59g/kgの範囲で除脂肪体重への有効性が確認されてます。
- 複数回にわけてタンパク質を摂取する:。高齢者は若者よりも一食あたりのタンパク質への反応が鈍く、胃や腸への負担が大きいです。一度での摂取量では単純に難しいこともありますし、消化・吸収効率も良くないので、小分けにしてタンパク質を摂取するのも、手段の一つです。目安としては、一食あたり体重1kgにつき0.4gから最大0.55gの摂取を目指すのが良いでしょう。
- 消化しやすく手軽なタンパク源で摂取する:高齢になると、消化・吸収効率のみならず、食欲や噛む力、調理する体力なども低下しやすくなります。なので、「消化しやすい食事」も然ることながら、無理なく継続できるかも大切です。たとえば、卵やヨーグルトなどの乳製品、プロテインなどを組み合わせていくのが良いでしょう。一品目に限定せず、複数のタンパク源を組み合わせることで、アミノ酸スコアや消化率の問題も対応できるようになります。
- 運動する:どんなにタンパク質を摂取しても、筋肉を刺激しなければなりません。運動は、加齢によるタンパク質の吸収率低下問題を解決するためにも必要です。ウォーキングでも筋トレでも、無理のない範囲で継続的に筋肉を刺激し、少しずつ負荷を増やしていきましょう。
…が、良いのかもしれません。
今回の実験結果を参考にするのなら、まず、高齢者のタンパク質の消化・吸収効率が、すべての食品において低下するとは言い切れないということ。なので、特定の食品を避ける・摂取するよりも、十分な総摂取量を担保し、複数回に分けて、さまざまな食品から取り、運動をしっかりするのをベースにしていきましょう。
年齢を重ねると、健康維持のためにやることが…、やることが多い…!!
【参考文献】
[Differences in amino acid digestibility between young and older adults: a randomized crossover study using the dual tracer method]
[Systematic review and meta-analysis of protein intake to support muscle mass and function in healthy adults]
[How much protein can the body use in a single meal for muscle-building? Implications for daily protein distribution]