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「生産的失敗」こそ、僕らにとって優秀な教師である

成功から何も学ぶことはないが、失敗からは学ぶことがたくさんある…。

聞いたことがあるかと思いますが、これは正にそのとおり!
実際に、『「生産的失敗」は、勉強の内容を深く理解できる!』という結論を出している論文が存在しています。

今回のブログを参考に、勉強やビジネス、スポーツに打ち込んでいってください♪

 

 

優秀な教師から学ぶより3倍成果が向上する「生産的失敗」について

 

まずは、「生産的失敗」について説明していきます。

生産的失敗とは「自分にとって有益になる失敗」のことです。
これはすなわち、何度も失敗を積み重ねて、自身の手で解決方法を導き出し、そうすることで正解にたどりつくというところに意味があります。

いままでの一般的な指導法としては、

 

  1. レクチャー:学習の対象を説明する
  2. デモンストレーション:学習の内容を実践してみせる
  3. フィードバック:実際に学習内容を実践してもらい、失敗したときは修正し、成功したときは報酬を与える

 

この学習モデルが一般的に効果があるとされてきて、実際に効率よく学習を進めるのに有効であることがわかっております。

ところが、近年では「ヒントなしで手探りで経験してのも大事なのでは?」という考え方も出てきております。
いかに効率的に正解に辿りつくだけでなく、試行錯誤で学習していく方が理解が深まり、長期的にみて役に立つのでは?…という理論ですね。2011年の実験では「生産的失敗」の効果を検証するため、次のような実験をしております。

 

  1. 2年生~5年生を招集し、2つの教室で平均速度の計算方法についてどれだけ知識があるかを確認するために、30分間のプレテストをおこなう
  2. その後、全体を「直接指導」と「生産的失敗」の2グループにわけて、異なった学習方法で「平均速度の計算方法」を指導する
  3. 「直接指導」グループは、平均速度についての講義からスタート。まず教師が速度や平均の概念を説明し、いくつかの例を取り上げて質問を促し、学生に練習問題を解かせて宿題を出した。このような講義→実践→宿題→フィードバックのプロセスを7回の授業で繰り返す
  4. 「生産的失敗」グループは小さな集団に分かれ、それぞれが次のような2つの複雑な問題を解くように指示された。

 

「ハチドリは、毎年カナダからチリまでの約9000kmを往復しています。オオハチドリはハチドリの仲間の中では最も大きく、体重は18~20グラム。体長は23cmで、1分間に70~80回羽ばたき、18時間の飛行で6時間の休息を必要とします。いっぽう、フトオハチドリもハチドリの仲間で、1分間に100~125回羽ばたきます。体長は約10~11cm、体重は約3~4gで、12時間飛行すると12時間の休息が必要でし。550回の羽ばたきで1km移動でき、ほぼ同時にカナダを出発した場合、どちらのハチドリが先にチリに到着するでしょうか?」
以上の問題について教師のサポートや指導は一切なく、ただ2回の授業でそれぞれの問題を解くように指示(計4回の授業)。その後、宿題は出されなかったたが、グループで問題を解いた後に、個人で取り組む問題が追加された(2コマ)

6回の個人作業の後、最終授業では、複雑な問題を解決するための解決策、戦略、アプローチなどを教師とお互いに共有する。この段階で教師は「正しい」方法で問題に取り組み、解決方法を説明し、学生たちが正しい答えにたどり着けるようにサポートを行った

 

 

どちらのグループも7回の授業で平均速度の計算方法を同等に学習したが、「生産的失敗」グループにはしばらく一切の指導もなく、トコトン自身の力で考えさせたわけです。

この実験の結果なのですが、

 

  • 簡単な問題と複雑な問題の両方において、生産的失敗グループは、直接指導グループに大差をつけて好成績を収めた
  • 単純な問題の場合、生産的失敗グループの平均スコアは84.8%で、直接指導グループは75.3%だった
  • 複雑な問題の場合、生産的失敗グループの平均スコアは59.7%で、直接指導グループは42.4%だった

 

生産的失敗は短期的にみると効率が悪そうに見えますが、生産的失敗は問題の根本的な原理や解決策への理解が深まるそうです。つまり、長期的に物事を考えると生産的失敗の方が役に立つことになります。

研究チームは、

問題解決を目指し、学生たちは多種多様で斬新なアイディアや方法を編み出した。
また、それだけではなく、生産的失敗を目指したグループには、「自分の考えた方法がなぜうまくいかないのか」や「なぜ他の方法のほうが良いのか?」を根底から知ろうとするモチベーションが生まれていた。

 

生産的失敗には学習のモチベーションアップ効果もあるのかもしれません。
自身の手で導き出したメソッドには愛着がわきますから、これには納得の一言ですね!

 

 

続いて、2021年に出たスイス連邦工科大学チューリッヒ校が新たにおこなったメタ分析がありまして、「生産的失敗がどれだけ効果的なのか?」を徹底的に追究していったものがありますので、その効果を紹介します。

これは過去15年間に行われた教育研究のメタ分析でして、53件の研究をもとに比較分析を行ったものとなっております。どの研究も「学習前に指導をおこなう、そしてその反対をおこなうとを比較して、どちらの学習法がより効果的なのか?」という問題に着目していまして、その内容が以下のとおりです。

 

  1. 対象は小学生~大学生まで、出身国は北米が約半数、ヨーロッパ(26%)とアジア(28%)がそれぞれ1/4以上を占めている
  2. 学習科目は数学、物理学、化学、生物学、医学など(読解力や作文力などの一般的なスキルや、人文・社会科学分野の問題は対象外)
  3. 各分野の概念をどれだけ理解し、それらの応用スキルをチェックしている

 

このメタ分析によって得られた結論は、以下のようになりました。

 

  • 基礎を指導される前に演習や問題を解いた方が、対象者全員が大幅に優秀な学習成果を上げていた
  • この効果は小学生でも大学生でも変化がないものの、小学校の学生よりも中学・高校の学生や学部生の方が該当していた。おそらく、小学生は基礎知識が少ないため、推察や解決方法の手段などが見つけられないからだと思われる。
  • 理論を学習する前に実践することは、優れた教師から1年間指導を受けるよりも2倍近く効率的だと考えられる
  • トレーニングの段階で「生産的失敗」をすると、優れた教師から1年指導を受けるよりも3倍も学習成果が向上する

 

余談になりますが、このチューリッヒ工科大学の研究チームは、自分たちの「線形代数」コースでも「生産的失敗」を採用しており、その結果、講義前に生産的失敗をした学生の課題の合格率は、一般的な講義を受けた学生より20%も高かったそうです。

 

「生産的失敗」が有効であるメカニズムですが、研究チームは以下の4つを推測しております。

 

  1. 難問を解決するには、できるだけ多くの知識を使う必要がある。その点で「生産的失敗」は、自身が持つすべての予備知識を活用させてくれる(いつもどおり講義を受けていると、効率よく問題を解くために特定の知識しか使わない)
  2. 「生産的失敗」は、学習する人自身の「知っていること・知らないこと」の差が認識できる。その恩恵により、知識を埋めようと学習へのモチベーションにつながり、自身の問題点に気づきやすくなる。
  3. 一度、自身の力で考えているので、新しい概念を効率よく受け入れやすくなる。これは、受動的に知識が伝わるよりも納得しやすくなる。
  4. 最終段階で講師からフィードバックを受け、学習者が導き出した解決方法がなぜ見当違いなのかを理解することで、さらに問題への理解が進む。

 

やっぱり、自分自身の力で道を切り開く姿勢が一番!ってことなんですなぁ~~。。。

 

 

【参考文献】
[Designing for Productive Failure]
[When Problem Solving Followed by Instruction Works: Evidence for Productive Failure]

 

 

 

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