運動が健康に良いのは、当然の知識です。
ですが、何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」でして、自身を追いこんでしまうと体調不良をおこしてしまうのもまた事実です。
今回は「どれくらい運動をし過ぎると、運動による健康効果が出てこなくなるのか?」と題して、運動による健康へのメリットが、週にどれくらいすると低くなってしまうかを解説していきます。健康になるための運動が、自身の健康を損ねてしまうのはナンセンスですからね…。
どうぞ、参考にしていってください♪
身体活動レベルによる健康状態の関係性
これは2021年にでたコホート研究で、142,493名分のオランダ人(平均年齢42歳)のデータを収集し、中等度~活発な身体活動(MVPA:早歩き~ランニング程度の負荷の運動)と心臓病や脳卒中による死亡率との関係性を、およそ中央値6.8年の追跡調査をしてくれています。調査に協力してくれた人たちは、健常者と、不健康な人(高コレステロール値)に分かれてもらっています。
対象者全員の運動量については、事前に「通勤で週に何分ほど歩いてますか?」や「余暇でどれぐらい歩く、自転車に乗るといったことをしていますか?」などといった質問を用いて評価しています。そうしたうえで、心臓病や脳卒中の発症率とと比較していったそうです。
結果なのですが、
- 健常者の場合、非アクティブグループと比較して、運動量が第2、第3、第4四分位の人たちは、死亡リスクおよび循環器疾患の発症リスクがそれぞれ29%、28%、24%低かった
- もともと循環器系疾患の発症リスクが高いグループは、非アクティブグループと比較して、運動量が第1、第2、第3、第4四分位の場合は、死亡リスクおよび循環器系の発症リスクがそれぞれ31%、34%、36%、31%低かった
- すでに循環器系疾患を発症している患者の場合、非アクティブグループと比較して、第3と第4四分位群は死亡リスクおよび循環器系疾患の発症リスクがそれぞれ26%と30%低かった
専門的な部分は分かりにくいので割愛しますが、要約すると以下のようにいえます。
- 早歩き~ランニング程度の負荷の運動を増やすと、健常者でも不健康な人でも死亡リスクおよび循環器系疾患の発症リスクが割と低下する
- ただし、健常者と循環器系疾患の発症リスクが高い人は、ある程度を境に運動による健康効果が上がらなくなる
- 一方で、すでに循環器系疾患を発症している患者の場合は、運動量が多いほど死亡リスクが低下する。当然ながら、無限に低下し続けるわけではないと思われるが、今回のサンプル数で最もアクティブに身体活動をしている人たちのレベルが理論的な分岐点に遭遇しなかったとはいえる
さらに大まかにまとめると、
- 健常者の場合、運動量は一定のところで効果が限界になる
- 循環器系疾患に悩んでいる人の場合、運動による健康効果が消えない可能性がある
肝心の「どれくらい運動をし過ぎると、運動による健康効果が出てこなくなるのか?」についてですが、その境目を簡潔にまとめると、『1週間に「10000メッツ分」あたりを境に健康効果が低下する可能性がある』です!
分かりにくいかと思いますが、運動の強度(メッツ)に実施時間(分)をかけるだけで求められます。たとえば、国立健康栄養研究所のメッツ表を参考にすると、自転車でサイクリングを楽しむ場合は3.5メッツとなっておりますので、
- サイクリング(時速8.9km/h)を60分楽しむ場合=3.5 × 60=210メッツ分
といった具合です。
こんな風にみると、超ハードな運動をしない限り、10,000メッツ分にはたどりつけないでしょうね。それこそ競輪レベルの高負荷の運動を625分(1週間で約10時間、毎日練習するなら1日で約1.4時間)しないと到達しませんから。一般人レベルの身体活動レベルでは、ほとんど気にする必要はないかと思います。
この研究の注意点としては、運動量の測定が自己申告だというところ。
なので、今回のデータがどこまで信用していいかはわかりませんし、循環器系疾患の発症リスクしか調査していません。ガンやその他の臓器への健康効果については不明なので、大体の指標で
- 1週間で10,000メッツ分なので、筋トレは6.0メッツだから週5で60分だと1,800メッツだから、もう少し追い込んでも大丈夫だな…
と考えると良いのかな?って思っています☆