ネットによる誹謗中傷によって、若くて将来有望な人物が亡くなるのは、本当に悲しいことです。
ネット上で悪意あるコメントをしているのは、日ごろのストレスの八つ当たりではなく、ただ楽しんでいるだけだという人が一定数います。また、ちょっとでも攻撃できる理由を強引に作って中傷コメントをする人もいます。なので、全員が全員、出来心で批判しているわけではありません。
こんな人たちが幅を利かせているのが、やるせなくて仕方がありません…。
心の傷というのは、実のところ、人によっては時間が経っても解決することがないという指摘があります。
時が経てば癒されるだろうと思っている人がいるようですが、それだけでは解決できないことが研究によって示唆されています。一生の傷となって僕らの脳裏に焼きつき、それに悩まされることだってあるのです。
今回は、そのことについて解説していきますので、よろしくお願いします。
『時間が解決してくれる』という考え方は危険
2016年のアリゾナ州立大学の論文で、「時が経ってもストレスが癒えない人がいる」という調査結果が出たようです。元々、ほとんどの人は時が経てばメンタルが回復すると考えていましたが、それだけでは解決できない人がいるという話です。
この研究は50,000人分の社会調査データを統計処理したもので、研究者によると、これまでのレジリエンス(メンタルの回復)研究は統計モデルに不備があったそうです。
従来の研究では、データを以下のようにわけていたようでして、
- 高レジリエンスグループ:メンタルの回復力が高く、みな同じようなペースで回復していく
- 低レジリエンスグループ:メンタルの回復力が低く、みな同じようなペースで回復が遅い
当然ですが、ストレスの内容によっては、たとえば仕事の失敗はすぐに立ち直るのに、失恋だとかなり引きずることがあります。平均すると早い方だけど、始めが長い人もいれば、なかなか心のしこりがとれない人もいるわけです。
そして、従来のレジリエンス研究だと「大体の人は、人生の満足度が10点満点中4~8の間で変動する」という前提の基で統計モデルを組んでいました。
しかし、実際の傾向が以下のようになっていて、いままでの研究に大きな差を生んでしまっていたそうです。
- 高レジリエンスグループ=人生の満足度が6~8ポイントの間で長く安定している
- 低レジリエンスグループ=人生の満足度が2~10ポイントの間で大きく変動する
以上の要素を組み込み、従来の研究結果と新たに計算しなおした結果が以下のとおりです。
同じデータベースを利用しているのにも関わらず、結果に大きな差が生まれました。
■従来の研究結果
- 配偶者の死:75%の人が時間とともにメンタルが回復する
- 離婚の経験:85%の人が時間とともにメンタルが回復する
- 仕事の解雇:81%の人が時間とともにメンタルが回復する
■新たな計算結果
- 配偶者の死:時間とともにメンタルが回復する人は、わずか27%のみ
- 離婚の経験:時間とともにメンタルが回復する人は、わずか36%のみ
- 仕事の解雇:時間とともにメンタルが回復する人は、わずか48%のみ
研究者によると、『「心の傷は時間とともに解決してくれる」という考え方は危険である!』としています。
本来ならば、外部からの支援が必要な人を見過ごしてしまう可能性を増やしてしまいます。
いろんな心的ストレスがありますが、その人にとって適切な対処法をおこなうか、よく考えることが大切なようです。
中にはそのままにしても、自然と回復する人はいます。
ですが、なかなか立ち直れない人だっているというわけですね。
「自分はメンタルが弱いから、全然前向きになれない…。」
とお思いの人もいますが、むしろ、それがデフォだと思います。
自分でも他者からの支援でも良いので、心の傷は特に、放置せずに積極的に回復にあたった方が賢明です。
何事も先延ばしはよろしくはないですので、悩み事はどうぞお気軽にご相談ください☆
【参考文献】
[Resilience to Major Life Stressors Is Not as Common as Thought]